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IPOコラム
ショートレビューとは?実施時期からポイントまで徹底解説!
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ショートレビューとは?
ショートレビューとは、監査法人が上場を検討する会社に対して、上場に向けた課題を確認するために行う調査のことです。一般的には3日~5日間程度の日数で、資料の閲覧やヒアリング等の簡易的な方法で会社の現状を調査し、上場するために必要な水準と現状とのギャップを把握し、課題を具体的に明らかにする調査のことをいいます。
上場をめざす会社にとって、上場準備の第一関門がこのショートレビューです。
なお、ショートレビューは「予備調査」「短期調査」「クイックレビュー」とも呼ばれることもあります。
上場スケジュールから逆算するショートレビューの実施時期
上場を申請する期を一般的にn期と呼びます。
一般市場では2期分、すなわちn-1期とn-2期の監査報告書が必要となりますので、ショートレビューを受けるタイミングは、n-3期に受けるのが一般的です。一方、TOKYO PRO Market(以下、TPM)の場合は、n-1期のみ監査報告書が必要であるため、n-2期にショートレビューを受ける会社が多いです。
ただ、監査報告書対象期の直前期でショートレビューを依頼する場合、当初予定していた上場スケジュール通りにいかない可能性があります。なぜなら、監査法人はショートレビューを通して監査契約をするかどうかの判断材料としています。ショートレビューの結果、課題事項が多い会社の場合は監査工数がかかり、監査リスク、すなわち誤って監査報告書の意見を表明してしまうリスクが高くなりますので、監査契約の締結を見送られる可能性が高くなります。
工数が多くかかるであろうと推測できる場合、例えば、海外子会社を有する会社や連結子会社を多く有する会社、ビジネスモデルがわかりづらい会社の場合や、財務状況や業績が芳しくない等、上場できる見込みがない場合は、そもそもショートレビューを受けることができない可能性があります。また、会社の規模が大きい会社の場合は、組織管理体制を再構築するのに相当時間を要します。また社歴が長い会社ほど社員の抵抗が強く、時間を要したりします。
よって、ショートレビューを受けるタイミングは、自社の置かれている状況を踏まえ、IPO準備状況を踏まえて、ショートレビューを受けるタイミングを慎重に検討する必要があります。場合によっては、一般市場であればn-4期もしくはn-5期、TPMであればn-3期もしくはn-4期にショートレビューを受けるスケジュールを想定しておくことも必要です。
特にTPMの場合、監査証明期間が一般市場よりも短いですが、実質的に内部管理体制を構築することは一般市場と変わりがないため、例えば、経理関係の改善に時間を要して結局間に合わないケースもあるため、留意が必要です。
ショートレビューの流れとポイント
一般的なショートレビューの流れは以下の流れになります。
①監査法人に指定された資料を提出する
②初日に監査法人は経営者に会社の概要等のヒアリングを実施する
③資料やヒアリングで論点を確認する
④会計処理や内部管理体制についてヒアリングで事実を確認し、問題点を抽出する
⑤問題点をとりまとめて報告書にして経営者に報告する
➀監査法人に指定された資料を提出する
資料の提出ですが、資料が全て揃っている会社は少なく、資料がない場合、監査法人はヒアリングを通して確認します。
ショートレビューは時間がない中で行いますので、ショートレビューを効率的かつ有効なものとする場合は、資料がある方が望ましいです。資料がない場合は、監査法人は内部管理体制が不十分であると判断し、資料の提出が遅く、請求書や領収書、契約書等の証憑関連書類が整理されていないと監査工数がかかるとみられます。
②初日に監査法人は経営者に会社の概要等のヒアリングを実施する
経営者へのヒアリングを行うのは、経営者が誠実な人物なのかを確認することが主な目的です。
経営者による不正は、いくら会社の内部管理体制を構築しても無効にすることが可能であることから、経営者の資質を監査法人は重視しています。よってインタビューする者は監査責任者が行うのが一般的です。経営者は事実を隠さず、ありのままの状態でインタビューを受け、自社の状況をロジカルにわかりやすく説明することが肝要です。
③資料やヒアリングで論点を確認する
論点の確認は監査法人によって差があります。
決算中心だけの監査法人もあれば、資本政策や関連当事者取引、システム統制等、幅広く論点を確認する監査法人もあります。よって、ショートレビューで全ての問題事項が抽出されることがないことに留意する必要があります。
④会計処理や内部管理体制についてヒアリングで事実を確認し、問題点を抽出する
ショートレビューのメインになるところです。
一般的に非上場会社は税務申告書を作成する目的で会計を行っていますので、会計基準に基づき会計処理をする財務会計を行っておりません。よって財務会計を適用していない指摘事項が多くなります。具体的には、賞与引当金、退職給付引当金等の引当金、減損会計、資産除去債務、税効果会計等の会計処理が行われていないことです。
また、非上場会社の多くは、内部管理体制がルール化されておらず、内部管理に関する資料がない場合が多く、属人的な管理であるため様々な指摘を受けます。監査法人の指摘事項は改善するためのポイントが記載されています。内部管理体制の構築が上場準備において非常に多くのウエートを占めるため、より具体的により多くショートレビューで指摘されるほうが望ましいです。
従って、業務をよく理解している者が対応することが重要です。
⑤問題点をとりまとめて報告書にして経営者に報告する
最後に報告書のドラフトが事前に送られてきて、その報告書の内容が事実に反していないかどうか自社で確認し、報告会にて報告を受けることになります。
記載されている指摘事項を改善していくことになりますので、レポートが事実に反していないかどうかの確認、疑問点があればその場で質問し、解消するようにします。
一般的に報告書には決算修正後の数値が記載されていますが、修正事項が多い会社の場合は、実質債務超過になるケースもあります。その場合は、上場スケジュールに影響することに留意する必要があります。
ショートレビューに必要な費用
ショートレビュー費用は、監査法人によって異なってきます。
また、ショートレビューを受ける会社の規模、業種、拠点数、グループ会社の数、海外子会社の有無、上場を目指す市場などによって異なります。その為、ショートレビューを検討するにあたっては複数の監査法人に相談し、ショートレビューの費用を確認するのが良いです。おおよその目安としては200万円前後のケースが多いですが、各社の状況などにより100万円前後の場合も、300万円前後の場合もあります。
ショートレビューを依頼する監査法人の選定ポイント
一般市場の市場別の監査法人の実績数をみていきますと大手・準大手の監査法人が占めていることがわかります。特に3大監査法人の割合は全体の4割を超えていますので、やはり大手監査法人に集中していることがわかります。
一方TPMは逆に大手監査法人は非常に少なく中小監査法人に集中していることがわかります。
なぜこのような分布になっているのでしょうか?
それを知るためには、監査法人を取り巻く環境を理解することが重要です。監査の厳格化と人手不足により、監査法人が監査できる会社数には限りがあります。監査は自社の決算書が適正であることを意見表明することですから、一種の保証業務です。
よって、どうしても大手監査法人の監査報告書の信用が高いと判断され、おのずと大手監査法人に集中してしまいます。特に一般市場においては利害関係者が多く、その傾向が強くなります。
一方TPMにおいては、一般市場とは違い、プロ投資家対象の市場であるため、利害関係者も少なく、さらに会社の規模も小規模であることから、大手監査法人はそもそも対象にしていないのが現状です。例外的にTPMをステップとして一般市場にあがれる可能性がある会社のみ受け付けているようです。
よって、自社がどのような市場をめざすのか、自社の現在の状況及び将来どのように成長するのかを、ショートレビューを依頼する監査法人に説明する必要があります。
現状の監査法人を取り巻く環境が厳しいため、必ず複数の監査法人に相談することが重要です。但し、大手監査法人の場合は直接コンタクトをとるのは難しいため、紹介者を通じてコンタクトを取る必要があります。中小監査法人に依頼する場合は、過去にどのような行政処分を受けたことがあるかを確認することが重要です。さらに中小監査法人の関与責任者がどのような人物なのかを確認することが重要です。過去に不祥事を起こして別の監査法人に在籍している可能性があるためです。そのようなケースに当たった場合、監査法人が問題で監査法人の変更を余儀なくされ、上場時期がずれ込むケースもありますので、留意する必要があります。
最後に、ショートレビューの粒度の視点から監査法人を選定することも重要です。ショートレビューの指摘事項を改善することにより、自社は上場に近づくことができます。ショートレビューの確認範囲が狭い場合は、自社は改善事項を認識できないため、ショートレビュー以後の監査で改善事項が多く出てくるケースもあり、その結果、時間的に対応できず監査意見がでないケースもあります。
よって、ショートレビューを網羅的に細かく丁寧に実施してくれる監査法人かどうかを判断するために、契約前にショートレビュー報告書のサンプルをみせてもらい、その上で監査法人を選ぶのがよろしいです。
ショートレビュー後の対応
ショートレビュー後は、監査法人によるアドバイザリーを受け、指摘事項を改善するケースが多いです。よって、ショートレビューを受ける時期は決算が確定した後に実施し、監査契約前まで監査法人による指導を受けるのが時間的な余裕もあり、望ましいです。
その場合、積極的に自社からアクションすることが重要です。監査法人は忙しいため、なかなか対応してくれない場合もあります。監査法人のアクションを待っていたら手遅れになりますので、留意が必要です。
最後に
株式会社船井総合研究所では、上場準備会社様に向けたIPO準備に関するセミナーを定期的に開催しております。
また、IPO準備全般について、弊社では実際に事業会社にてIPO準備に携わった(CFOや上場準備責任者等)IPOコンサルタントが在籍しておりますので、下記よりお問合せください。
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