IPOコラム

社長が知っておくべきIPO準備における内部監査のコスト

■ 本題とは別に、IPO準備における内部監査関連のコラム掲載しておりますので、ご覧ください。

▶ IPO準備における内部監査とは
▶ IPO準備における内部監査運用前に確認すべき主なポイント   
▶ IPO準備における内部監査のスケジュール
▶ IPO準備における内部監査の外部活用(アウトソーシング)      
▶内部監査を実施する上での社内諸規程の確認・整備(改訂)のポイント
▶ IPOにおいて「内部監査」に役立つ資格

1.「年度予算策定」の観点からみる、内部監査に係る経費(コスト)

内部監査はヒトが資本の部門です。したがって、内部監査業務の運営にかかる社内コストは販売管理費の中でも「人件費」と「出張旅費」が主となります。その他では、内部監査の最新情報をキャッチアップするための費用や社外のセミナー参加(勉強会)や専門書籍を購入するなどの教育費用などがあげられます。例えば最新情報を得るための「内部監査協会」に入会(入会金10万円、年会費10万円程度)するための費用等がその例です。

そこで、内部監査業務経験者を雇い入れる(中途採用)際に必要な社内コスト(イニシャルコスト・ランニングコスト)はトータルでいくらになるのでしょうか。年度予算を策定する上でも、今一度、算出してみてはいかがでしょうか?

例として、年収600万円(月給40万円、賞与60万円×2回[夏季・冬期])の内部監査経験者(中途採用)を雇用(1名)した場合を参考までに [別表1] のとおり、算出してみました。

[別表1]年収600万円と想定した場合の年度予算イメージ

内 訳金 額 (単位:円)備 考 (仮設定)
販売管理費給与4,800,000@40万円×12ヶ月
賞与1,200,000@60万円×2回(夏季・冬期)
通勤交通費240,000@2万円×12ヶ月
住宅手当240,000@2万円×12ヶ月
家族手当60,000@0.5万円×12ヶ月
通信費120,000@1万円×12ヶ月(スマホ等)
社会保険料 (健康保険)294,3009.81%  ( 折半額 [会社負担額] )
〃     (厚生年金保険)549,00018.3%  ( 折半額 [会社負担額] )
福利厚生費60,000@0.5万円×12ヶ月
採用費2,100,000人材紹介会社への成功報酬(35%)で算出
 ※初年度のみ
リース料 (ノートパソコン等)60,000@0.5万円×12ヶ月
教育研修費60,000@0.5万円×12ヶ月
※ 旅費交通費(日当、宿泊費含む)内部監査業務に係る実費(実査)費用
諸会費120,000
100,000
@1万円×12ヶ月(内部監査協会年会費)
@10万円(内部監査協会入会金)
 ※入会金は初年度のみ
雑費(名刺、書籍、事務用品費等)120,000@1万円×12ヶ月
① TOTAL  (年間経費  )
② TOTAL  (年間経費  )
10,123,300
7,923,300
(初年度)
(次年度以降)
※ 「旅費交通費(日当、宿泊費含む)」については、内部監査業務に係る実費費用(実査など)のため、 算出額には会社組織や拠点数・関係会社の有無によるところとなりますので、含んでいません。あくまでもイメージとして参考にしていただくために概算として算出した金額のため、正確な金額は顧問社労士などの専門家に確認してください

上記の通り、内部監査業務経験者を雇い入れる(中途採用)際に必要な社内経費(コスト)は、今回のモデルケース(年収600万円)の場合、最低でも初年度に1,000万円程度、次年度以降に800万円弱の経費(コスト)が必要となります。また、”最低でも”と記述したのは、これ以外にも会社によっては「退職金引当金」「時間外手当」「その他手当」「福利厚生費」等にも経費がかかることも忘れてはなりません。

内部監査業務経験者(正社員)を雇用するためには、ただ単に「年収600万円」という認識ではなく、実際の会社経費(キャッシュアウト)は年収の「1.3倍~1.5倍」程度を年度予算(計画)で計上しなければならないということです。言い方を変えると、ライニングコスト(内部監査部門設置)はもちろんイニシャルコストもかかるということがご理解いただけたと思います。

2.経費(コスト)の観点からも、「内部監査」の外注(アウトソース)」の活用も選択肢に

IPO準備企業の経営者(社長)から「IPOは思った以上にコストがかかるなぁ」といった声をよく耳にします。従業員を雇用することは必然的に、経費(コスト)はもちろんですが、教育研修や勤怠管理・業務管理等を同時に行わなければなりません。そのような理由から「内部監査」の外注(アウトソース)活用の選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

内部監査部門(室)を設置(構築)するためにはヒトを選任しなければなりません。経営者(社長)の具体的な選択肢としては次の3つがあげられます。

① 社内異動(人事異動)

IPO準備企業がまず初めに検討することです。内部監査経験者が社内にいることは稀であり、上場準備中の会社は基本的に人員に余裕もありません。また、内部監査は独立性の観点からそれまで従事していた業務について原則として兼務できないルールになっています。(クロス監査は別) IPOにおける「内部監査」を行うためには会社の業務ことを掌握し、業務に対して一定以上の水準の理解度等が求められ、かつ幅広い知識が必要となりますので、上場を目指しているフェーズの会社ではそのような人材が既に社内にいるケースは少ないのが現状ですし、新たに内部監査の知見を身につけるためには、一定量の時間も必要となりますので、当然、経費(コスト)もかかってしまいます。そのため、社内の人事異動による人員配置以外の方法を検討する企業が多いです。

② 中途採用(内部監査経験者)

上場企業には一般的に内部監査部門(室)を設置している企業が多く、近年では非上場会社であっても設置している企業も増えてきました。また、転職市場において「内部監査部門経験者」の絶対数は少ないのが現状ですので、報酬を一定水準まで高くして募集すれば経験者が集まり易いのですが、上場を目指す会社であると既存社員の給与水準にもよりますが、上場企業並みの高い報酬を出せないのが現実です。

このようなことから、経費(コスト)もかかってしまいますので、中途採用で内部監査の経験者を人員計画通りのタイミングで採用するのは容易ではないケースが多いです。

③ アウトソーシング(外注)の活用

内部監査をアウトソーシングする選択肢もあります。このことは、社内の人間が行うよりも、より客観的な監査となり有効であるといえます。また、内部監査の外部活用が可能な理由については、【IPO準備における内部監査の外部活用(アウトソーシング)】のコラムに記載していますので、よろしければご覧ください。

また、従業員でないため社長や経営陣に対し、忖度なく内部監査目線で指摘できるメリットもあります。中途採用の場合は監査品質が採用した人の経験に依存することになりますが、アウトソーシング会社を活用した場合は一定以上の品質で内部監査を行うことが可能となりますので、社内異動や中途採用が難しい場合にはアウトソーシングも検討するのも選択肢のひとつといえます。 また、経費(コスト)についても、前述の[別表1]と比較してみても、低コストで内部監査が可能となるケースがほとんどですので、まずはアウトソーシング会社に相談(見積り依頼)するのも必要かもしれません。

3.最後に

株式会社船井総合研究所では、上場準備会社様に向けた『IPO準備で内部監査をアウトソースする3つのメリットとは?』と題したセミナーを開催し、今後も定期的に「内部監査関連のセミナー」を実施予定です。

今現在、上場準備中で、直前々々期(n-3)のタイミングの会社様におかれましては、すぐにでも内部監査構築に向けての準備を始めることを推奨します。

また、「内部監査」のみならず、IPO準備全般について弊社の専任コンサルタントは、実際に事業会社にてIPO準備に携わった(CFOや上場準備責任者等)経験者が在籍しておりますので、お気軽にお問合せください。

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