IPOコラム

上場準備はいつから始めるのが良いか!?上場準備中が赤字でも上場した事例

将来的に新規上場(IPO)を検討されている経営者に、いつから上場準備を始めるのが良いか?と聞かれたら「営業利益30百万円がみえていれば上場準備を始めましょう」とお伝えしています。

もちろん、その後業績が拡大、事業が成長する前提の話にはなります。

その理由としては、新規上場(IPO)にあたって大事なのは、今の業績ではなく、数年後の業績であるためです。

決算期売上高経常利益
2020年6月期6億31百万円33百万円
2021年6月期7億62百万円▲42百万円
2022年6月期11億24百万円70百万円
2023年6月期第2四半期7億55百万円1億11百万円

福岡県福岡市に本社を置く、株式会社Fusicの上場までの業績推移になります。

同社は2023年3月31日に東証グロース市場に上場し、2023年4月14日時点での時価総額は60億96百万円となっています。

一般的に、新規上場(IPO)を目指す準備中を、上場する期を申請期(n期)、その1期前を直前期(n-1期)、2期前を直前々期(n-2期)と表現します。上場するためには2期間、監査法人との監査契約が必要なためで、上場に向けて監査契約を締結してから直前々期(n-2期)というようになります。その為、上場準備を進めているが、まだ監査法人と監査契約を締結していない場合は直前々々期(n-3期)と表現することもあります。

ここで、監査法人との監査契約締結までの流れもご説明します。監査法人との監査契約を締結するためにはショートレビューの実施が必要なことがほとんどです。ショートレビューとは予備調査ともいわれ、この会社と監査契約を締結しても問題ないか、この会社がきちんと上場できる会社なのか、などを監査法人が事前に調査するものです。監査法人はショートレビューを実施した上で監査法人内で協議した上で、その会社と監査契約を締結するかを意思決定します。その為、上場を目指したいから監査法人とする契約を締結したい、と思ってもすぐに進めることができるわけではありません。

株式会社Fusicのケースだと以下のようになります。(開示資料をもとに弊社の推測によります)

2020年6月期(直前々々期/n-3期)

2021年6月期(直前々期/n-2期)

2022年6月期(直前期/n-1期)

2023年6月期(上場期/申請期/n期)

ここでわかることは、2020年6月期の経常利益が33百万円のタイミングで監査法人のショートレビューを実施し、遅くても2021年6月期の期初には監査法人との監査契約を締結しているものとみられます。(例外の可能性もありますが一般的には)

また、監査契約を締結した直前々期/n-2期の決算が「経常損失 ▲42百万円」となっていますが、そのまま上場準備を継続したことで新規上場(IPO)することができています。赤字なので上場を延期しよう、コスト削減のために監査法人との契約を解消したい、となっていたら、2023年3月31日には上場できていません。

新規上場(IPO)準備にあたっては数億円の利益がないといけない、上場準備中で赤字が出たら上場できない、という先入観をもたれているかたもいるのではないでしょうか。更に、近年注目度が高まってきているTOKYO PRO Marketの場合、そもそも上場に必要な基準として、業績に関する項目がありません。

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