IPOコラム

TOKYO PRO Marketが注目される理由を大解剖

近年、TOKYO PRO Market(以下、TPM)への注目度が高まっております。
その理由はTPM上場企業数が増加しているためだと考えられている中で、今回はそこからさらに深堀って、TPMの特徴とともに「なぜTPM上場企業数が増加しているのか」をより詳しく解説いたします。

1.TPM上場企業の特徴


 上場企業数の推移、本社所在地の分布、業種別構成割合にわけて、TPM上場企業の特徴について解説いたします。

1-1.TPM上場企業数の推移


 TPMの上場企業数は年々増加傾向にあり、2021年度は13社がTPMへ新規上場しています。2021年は5月末時点で、既に10社が上場しておりますので、2022年度も昨年度の13社以上の新規上場企業数となることが予想されます。

TPMへの新規上場企業数の増加の要因の1つとして、2022年4月4日から始まった東京証券取引所(以下、東証)の市場再編が考えられます。

東証の旧市場区分と新市場区分の上場基準を比較すると、
旧JASDAQ市場への新規上場を目指していた会社がスタンダード市場を目指そうとした場合に、上場基準が引き上げられた形になります。

さらに、新市場区分においては、新規上場基準と上場維持基準が同一であるために、
今まで新規上場基準ギリギリで上場した企業にとっては、上場直後に上場維持基準を下回ってしまい上場廃止になってしまうリスクがあります。

このような背景から、新規上場する市場を一般市場ではなくTPMへ変更した企業が増えたことで、TPMへの新規上場企業数が増加していると考えられます。

1-2. 業種別構成割合


 一般市場とTPM上場企業の業種別構成を比較すると、TPMでは、幅広い業界・業種の企業が上場しております。その中でも建設業・不動産業が多くの割合を占めている点が特徴です。

ここで、建設業・不動産業のTPM上場が目立つ理由を2つの観点から考えてみましょう。

①業界構造の特色
建築・不動産業界は、エリア毎に有力企業が存在する傾向にあり、地域一番店となった地方の有力な建築・不動産企業がTPMへ上場を目指していることなども要因と考えられます。

②東証市場再編の影響
東証の市場再編によりスタンダード市場では、新規上場基準として
流通株式比率25%以上、流通株式時価総額10億円以上が必要となっております。その為、仮に流通株式比率25%として場合でも
40億円程度の時価総額が求められることになります。
業種により異なってきますが、PERが10倍、と想定される業種の場合は、最終利益4億円が必要となりますので、経常利益としては6億円以上は必要となります。

また、グロース市場においては、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を提出する必要があり、旧マザーズ市場の時の「成長可能性に関する説明資料」との違いとしては、任意ではなく必須になったことだけでなく、毎年更新が必要になりました。

これらの結果、一般市場への新規上場がハードルが高くなったと考え、TPMを目標市場とする企業が増えたとという見方もできるのではないかと思われます。

1-3.本社所在地

前述しました通り、TPMの特徴として、地方企業が多く上場していることが挙げられます。2021年12月末時点では、TPM上場企業数のうち約7割は東京都以外に本社を置く企業となっております。

また、2021年にTPMに上場した13社の、設立から上場まで年数は約28年で、2021年に一般市場に上場した125社の設立から上場までの期間は平均で約19年であることから、TPMのほうが業績の長い会社が多くなっています。

(参考:会社設立から上場までの期間が短くなる理由とは⁈

TPM上場企業は、地方老舗企業が多く存在します。こういった創業年数の比較的長い地方老舗企業が、TPMへ上場していることから、設立から上場までの期間が長くなっていると考えられるのではないでしょうか

2.TOKYO PRO Marketの活用


 TPMに注目が集まる理由として、企業の成長戦略におけるTPMの活用もが挙げられます。
今回は、成長戦略の一例として、ステップアップ上場をご紹介します。ステップアップ上場とは、TPM上場後に一般上位市場へ上場することを指し、2022年5月末時点では、5社がステップアップ上場しております。

今回は、この5社の中から株式会社Geolocation Technologyの事例をご紹介します。
同社は、2020月12月にTPMへ上場後、2021年9月福岡証券取引所(福証)のQ-Boardへステップアップ上場しております。
この短期間でのステップアップ上場成功の鍵は2つあると考えられます。

①ステップアップ上場を見据えたJ-Adviserの選定
同社はJ-Adviserとしてエイチ・エス証券と契約をしておりました。、エイチ・エス証券はJ-Adviserでありながらも、一般市場における主幹事証券を務めることも可能です。
Q-Boardへの上場の際にも主幹事証券として関わっております。
ここから、ステップアップ上場を見据えたJ-Adviserの選定が、TPM上場後に短期間でのステップアップ上場できた要因の一つと考えられます。

②TPM上場時からの入念な準備
福証Q-Boardの形式基準には「九州周辺に本店を有する企業又は九州周辺における事業実績・計画を有する企業」と定められており、同社はTPM上場前の2020年3月に福岡へ支店を開設しております。TPM上場の前段階で、Q-Board上場を念頭に置いた上場準備を進めていた可能性があります。

参考:福岡証券取引所「上場審査基準の概要」https://www.fse.or.jp/stock/criteria.php

近年、TPMを活用したステップアップ上場数の増加の理由は、TPMへの上場がゴールではなく、「グロース市場」「スタンダード市場」といった一般市場へ上場するためのファーストステップとして捉えて、まずTPMに上場する、という会社が増えてきているからと考えられます。

3.J-Adviser契約締結からTOKYO PRO Market上場までの期間

近年、TPMへの注目が集まる理由として、TPM上場までの準備期間が挙げられます。
図式で示す通り、通常TPM上場にあたっては上場の直前々期の期末近くから直前期の第1四半期あたりにJ-Adviser契約を締結します。直前期の監査を経て、申請期にJ-Adviserによる審査を経てTPM上場を迎えます。

しかしながら、上記のスケジュールとは異なり、例外的なスケジュールでTPMへ上場している事例もあります。

・株式会社Geolocation Technology

2020年9月に担当J-Adviserであるエイチ・エス証券株式会社とJ-Adviser契約締結後、2020年12月にTPMに上場しております。

出典:株式会社Geolocation Technology 発行者情報

・エヴィクサー株式会社

2021年7月に担当J-Adviserであるアイ・アールジャパン株式会社とJ-Adviser契約締結後、2021年12月にTPMに上場しております。

出典:エヴィクサー株式会社 特定証券情報

・株式会社アイガー

2021年12月に担当J-Adviserであるフィリップ証券とJ-Adviser契約締結後、2022年6月にTPMへ上場を予定しております。

出典:株式会社アイガー 発行者情報

ご紹介した3社は、J-Adviser契約締結後のわずか数か月でTPMへ上場しております。もちろん、全ての企業がこのようなスケジュールでTPM上場を果たせるわけではありませんが、なぜこの3社は短期間でのTPM上場に成功できたのでしょうか。

他の主幹事証券会社により一般市場への上場準備や上場審査手続きを進めていた会社であれば、担当J-Adviserが適宜の方法で上場審査を行うことが認められています。
例外的なスケジュールが容認されているため、このような短期間でTPMに新規上場している事例もあります。

4. まとめ


近年注目度が高まっているTOKYO PRO Market(TPM)についてまとめさせていただきました。新規上場(IPO)を検討するにあたって「グロース市場」「スタンダード市場」だけでなく、地方市場への上場、更にはTOKYO PRO Market(TPM)への上場という選択肢もありますので、それぞれの市場の特性や上場基準と、自社の今後の戦略と照らし合わせて上場までの計画を組み立てる際の参考にしていただけますと幸いです。

なお、株式会社船井総合研究所は、2022年4月11日(月)にJ-Adviser資格を取得いたしましたJ-Adviser視点でのTOKYO PRO Marketの魅力について弊社のJ-QSである宮井と前田が、Youtubeチャンネルにて本セミナーの内容をご説明しておりますので、是非ご視聴ください。
https://www.youtube.com/watch?v=VUQOEmVmj4Y

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