自社の予実管理をIPO可能な水準に高めるメリット
■はじめに
予算を作成する目的は何でしょう?
実際のところ、予算は作成していない、もしくは売上目標だけ設定している、という企業も多いと思います。
そこで今回はなぜ、予算を作成する必要があるのか、予算はどのレベルで作成する必要があるのか、予算を作成した後どのように運用するべきか、という点についてまとめてみたいと思います。
上場を目指す企業の経営者はもちろんのこと、上場の予定はないという企業の経営者も参考にしていただける内容になります。
■なぜ、予算を作成する必要があるのか
予算を作成する目的としては、会社目標を明確にする、社員向けの目標とするというケースもあると思いますが、それだけではなく、会社が迅速な意思決定ができるようにする、という点も大事です。
予算は、事業戦略に沿って作成します。
とはいえ、実際は予算と実績で乖離が生じます。
予算と実績で乖離が生じる要因は、戦略通りに行動できていない、戦略通りに行動できているものの予算の作成の仕方が間違っていた、外部環境が大幅に変わったなどが考えられます。乖離が生じた要因を分析し、戦略を大幅に変更する必要があるか、予算を達成するために必要なことは何か、といった意思決定を行うことができ、次の戦略に生かすことができるのです。
これを、年次単位で行うのではなく、月次、もしくは月次実績を見込みで作成した上で予実分析を行うことで、迅速に意思決定ができるようになります。
■予算をどのレベルで作成し、どう運用するか
上場を目指す場合は、基本的には全社PLだけでなく、事業別PLまで作成する必要があります。ここで大事なのは、予算作成プロセスと、予算数字の根拠です。
社長がトップダウンで、売上や利益を昨年対比〇%増、と設定している会社も多いと思いますが、それは予算ではなくあくまでも目標数値であって、根拠に乏しい数値となってしまいます。
予算を作成するプロセスとしては、社長が来期の経営方針や目標数値を提示した上で、それらをベースに担当部署の責任者が予算を作成するのが良いです。
多くの場合は、社長の提示した目標数値と、担当部署の責任者が作成した数値とでギャップが生じます。
そこで、社長と担当部署の責任者の間で
・ギャップがどうして生じるのか
・そのギャップを埋めることは可能か
・そのためにどのような投資などが必要かなど
を協議していくことで、予算の精度は高くなっていきます。
繰り返しになりますが、精度を高めるために、根拠を明確にするという点が非常に大事です。
精度を高めるためには、各項目毎に分解して作成していく必要があります。例えば、売上の場合、売上を分解すると、販売数×販売単価になります。
現状の販売数と販売単価それぞれを分析して、販売台数は〇〇の理由があるから〇%増加する、販売単価は昨年は〇〇だったが、来期は〇%下がる、といったように、業績の要因を細分化することで、根拠が明確になります。
なお、自社の過去のデータがあるとより根拠のある数字になりますので、過去データをきちんとまとめておくことも必要です。
■予算担当者の設定が大事
上場企業の場合は規模にもよりますが、予算の作成に3ヵ月以上必要とすることも多いです。
また、予算を作成し開示した後も、そのままでは意味がなく、月次で予算と実績を分析しないといけません。
その際に大事なのは、予算担当者がだれかを明確にしておくことです。
予算の作成とその後の運用までも大事な業務として明確に指示することで、担当者もコミットすることができます。
■上場を目指す企業の予実分析
上場を目指す企業にとっては、精度の高い予算を作成できるようにする、ということが非常に大事なポイントになります。特に上場審査にあたっては、予算の根拠などを細かく確認されますので、上場準備段階から予算作成にあたっての根拠資料を残しておくようにしましょう。
なぜ、上場審査にあたって細かくみられるのか、一般的に売上高は10%以内の変動(プラスorマイナス)、営業損益は30%以内の変動(プラスorマイナス)におさまる精度が求められてくるのか?、それらの背景などについては別のコラムでご紹介したいと思います。
船井総研のIPO支援にあたっては、予算作成フローの整備や実際にどのような資料を使って予算を作成するか、根拠資料はどのように残していくかなどについて、独自のマニュアルを用意しておりますので、気になる方はお問い合わせください。
執筆者
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部 宮井 秀卓