IPO支援コラム

ストックオプションの新制度!社外人材を活用するには?

SOとは?

SOという言葉の意味をご存知でしょうか?
SOとはストックオプションの略語でして、IPOを検討する会社様が必ず直面する課題です。
 
具体的にIPOを検討する会社様がSOに関するどのような悩みを抱えていらっしゃるかと言いますと、
例えば、
・社外の優秀な人材に自社に関わってほしい
・事業拡大、商品開発、営業、社内管理等のスペシャリストに関わってほしい
・優秀な人材の流出を避けたい
 
とはいえ
・給与や人件費を増やすだけの手元資金が少ない
・どのようにしたら会社に対する求心力を高められるのか
 
このようにと感じておられる方も多いと思われます。
 
これらは、会社関係者に対するインセンティブ設計の問題としてとらえられます。給与や賞与といった方法もありますが、本稿ではストックオプション(以下、「SO」)について説明致します。
 
2021年改正会社法によって、役員報酬の決め方が変更されました。
役員報酬でストックオプションの付与を検討されている経営者様にとっては是非ご覧いただきたい内容になっております。
詳しくはコチラ
https://funai-ma.webstarterz.com/mailmag/ipo/mailmag-2664/
 
SOとは、自社の株式を原資産とするコール・オプションのうち、特に企業がその従業員及び役員(取締役,監査役,執行役,会計参与)に報酬として付与するものです。法的には新株予約権の一種になります。コール・オプションとは一定の金額の支払いにより、原資産を取得する権利を指します。
資金力の乏しいベンチャー企業でよく用いられ、報酬変わりに付与することで、従業員のモチベーションを高め、優秀な人材の確保が可能になります。
 
すなわち、会社の株式をあらかじめ定められた格安な価格で購入する権利を付与することを指します。
「あらかじめ定められた割安な価格」を「権利行使価格」と呼び、この権利を行使することで、実際の時価より小さい額で株式を購入し、それよりも高額な時価で市場で売却することができます。
(SOについての詳細はコラム「ストックオプションの種類と役割」で解説しておりますので、こちらの記事をご覧ください
https://funai-ma.webstarterz.com/mailmag/ipo/mailmag-1999/))
 
そして、2019年に「社外高度人材に対するストックオプション税制の適用拡大」に関する内容が経済産業省HPよりされました。今回の制度改正は、税制上の優遇措置が得られる税制適格ストックオプションの対象に社外の人材が加えられた点が特徴です。
 
本稿では以下に、制度趣旨や、目的・意義について触れて参ります。
 

税制適格ストックオプションとは

通常、SOは権利行為時に課税されます。ですから、SOを付与しても権利者に多額の税金でインセンティブ効果が薄くなり、さらに金額が大きい場合には付与対象者も納税が困難な状況に陥ります。そこで税制適格ストックオプション(以下、税制適格SO)が機能します。一定の要件を満たすSOに関しては、権利行使までの課税を株式売却時にまで課税を先延ばしにする優遇措置が認められます。この優遇措置が認められるSOを税制適格sOと呼びます。
 

■制度趣旨

従来の税制適格SOでは、対象者が社内の取締役及び従業員等に限られていましたが、新制度では高度な知識や技能を有する社外の人材にまで拡大されます。
これにより、スタートアップ企業をはじめとした設立10年以内の中小企業の成長支援に対して、優秀な人材が関わりやすくなります。
では、高度な知識や技能を有する社外の人材とはどのような人材でしょう。
 

■高度な知識や技能を有する人材とは

高度な知識や技能を有する社外の人材とは、以下に該当します。
①国家資格を有し、当該資格に関する3年以上の実務経験がある者
②博士の学位を有し、研究、研究の指導、教育に関する3年以上の実務経験がある者
③高度専門職の在留資格をもって在留し、当該専門性に関する3年以上の実務経験がある者
④上場会社の役員(取締役、会計参与、監査役、執行役)として3年以上の実務経験がある者
⑤将来において成長発展が期待される分野の、先端的な人材育成事業に選定され、従事していた者
⑥社外高度人材活用新事業分野開拓計画*を開始する日から遡った10年間に、日本の公私の期間で製品または役務の開発に2年以上従事した者
 
(出典:中小企業庁『-中小企業等経営強化法-社外高度人材活用新事業分野開拓計画策定の手引き』より引用)
 
※ただし、上記付与対象者のうち以下に該当する場合は例外にあたります
・大口株主及び大口株主の利害関係者*
・未上場会社の場合、発行済み株式のうち3分の1以上を保有する者
 ※大口株主の利害関係者とは以下を指します。
 ・大口株主の親族(配偶者,6親等内の血族及び3親等内親族)
 ・大口株主と事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の直系血族
 ・大口株主の直系血族と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
 ・大口株主から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者及びその者の直系血族
 ・大口株主の直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
 
ご覧のように、弁護士や公認会計士など国家資格を有する人材のほかにも、研究者や上場企業の役員経験者が加えられています。経産省によれば、これらの人材は下記に貢献することが求められています。
 
・製品・サービスの開発に貢献すること
・事業拡大や販路拡大に貢献すること
・会社成長期の組織拡大に伴うガバナンス体制構築等に貢献すること
 
製品開発において専門技術が必要であり、そのために技術者の知識や経験、能力を活用したい企業側のニーズは想像に難くないですが、会社の内部統制に貢献する人材も対象になっている点は、近年のコーポレートガバナンス強化の必要性やIPO人材への注目が高まっている世相を反映したものともいえます。
 

■制度導入の背景

今回の制度改正に先立って行われた政府の調査では、スタートアップ企業を含む中小企業において、資金調達と並んで質の高い人材確保が課題として認知されています。
 
『ベンチャー企業を含む中小企業の経営上の課題』(調査対象企業数2636社)
資金調達・・・・・・・・・・・・・・・・・47.6%
質の高い人材・・・・・・・・・・・・・・・47.1%
労的な労働力の確保・・・・・・・・・・・・34.4%
販路開拓・マーケティング・・・・・・・・・31.4%
自社の宣伝・PR ・・・・・・・・・・・・・27.8%
事業や経営に必要な知識・ノウハウの取得・・24.9%
製品・商品・サービスの競争力強化・・・・・23.6%
 
(出典:経済産業省『平成31年(2019年度)税制改正について』37ページより引用 URL:https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2019/pdf/zeiseikaisei.pdf
 
制度改正の背景には、中小企業において、会社経営における、事業面・管理面に対して貢献できる人材が必要とされているという認識があります。
 
従来こうした人材の知識や経験、能力を活用する方法の一つとしては、取締役など役員として登用するか従業員として採用した上でインセンティブとして税制適格SOの権利を付与するといった方法がとられていました。
 
本制度により取締役など役員としての登用や従業員として採用をしなくても税制適格SOの権利付与が可能な点は、企業が経営課題を解決するために「質の高い人材」を探すにあたって選択肢が広がるため、企業側にとってみれば、様々な立場、組織の人物から関与を受けやすくなります。
他方で人材の側からすると、社員や役員にならなくても、インセンティブとして「税制適格SO」を付与されることで、スタートアップはじめ中小企業の経営に関与しやすくなります。自身のキャリアのチャンスの拡大につながります。
 

自社に税制適格ストックオプションを導入するには

ストックオプションの導入にあたっては、株主構成を鑑みながら、どのような条件で、誰にどの程度付与するのかを資本政策として考え検討する必要があります。特に税制適格SOについては該当するための要件が定められているため、税理士等の専門家に相談しながら導入を設計することがおすすめです。
 
2021年改正会社法によって、役員報酬の決め方が変更されました。
役員報酬でストックオプションの付与を検討されている経営者様にとっては是非ご覧いただきたい内容になっております。
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備考*中小企業等経営強化法では、国により認定を受けた事業者が税制や金融の支援を受けられる制度を定められています。
 
今回の税制適格SOをめぐる制度変更は、社外高度人材活用新事業分野開拓計画を提出し、認定を受けた企業が対象になります。