IPOコラム

IPO準備における内部監査とは

■ 本題とは別に、IPO準備における内部監査関連のコラム掲載しておりますので、ご覧ください。

▶ IPO準備における内部監査運用前に確認すべき主なポイント   
▶ IPO準備における内部監査のスケジュール
▶ IPO準備における内部監査の外部活用(アウトソーシング)  
▶内部監査を実施する上での社内諸規程の確認・整備(改訂)のポイント 
▶ IPOにおいて「内部監査」に役立つ資格   
▶社長が知っておくべきIPO準備における内部監査のコスト

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1.内部監査とは

内部監査とは、会社の経営活動に資する目的で、経営者の指揮の下(一般的には社長直属)に、企業活動全般を対象に実施する監査をいいます。
また、内部監査は法令上定められていませんが、一般社団法人日本内部監査協会の内部監査基準において、内部監査の本質について以下のように定めています。

内部監査とは、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営諸活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度をもって評価し、これに基づいて客観的意見を述べ、助言・勧告を行うアシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務である。
(一般社団法人 日本内部監査協会、内部監査基準より)

つまり、内部監査の主な目的は、会社の利益に貢献することです。

2.内部監査部門(機能)設置が必要な対象会社

上場企業および会社法上の大会社(資本金5億以上、または負債総額200億円以上の株式会社)に該当する会社は内部監査を実施する必要があります 。
ただし、上場準備会社においては上場会社として内部統制等を求められるため、 必須です。なお、上場審査においては、一般的には少なくとも直前1年(1年以上)における体制整備・運用が求められています。

3.内部監査部門の役割

それではなぜ、IPO準備において内部監査部門の設置(機能)が求められるのでしょうか?

前述でも触れましたが、その理由はズバリ「上場会社に求められているため、上場審査で求められている」からです 。

昨今の紙面やマスメディアを見ると、東証一部上場企業で誰もが知っている会社であっても不祥事が発生しており、社会的にも上場企業への信頼性が低下していると見る方も増えてきています。そのような理由から、コーポレートガバナンス強化目的を担う内部監査部門(もしくは内部監査機能)の設置が求められています。
内部監査部門は「十分な管理組織が整備、運用されているかどうか、事故、不正等を未然に防止し不測の損失を防ぐなど、適切な対応ができる状況にあるかどうかをチェックする」のが内部監査部門の役割です。


もちろん、内部監査部門(機能)を設置し運用すれば全ての不祥事や事故、不正が防げるわけではありませんが、当該部門を設置・運用することで、未然に発見できたり発生を抑える抑止力として効果があるため、上場会社や上場準備会社においては求められているのです。

4.内部監査の流れ

内部監査の概要や目的、役割は把握できたものの、実際にどのように進めていけばよいのか分からないという方もいるでしょう。

ここからは、IPO準備企業が実際に行っている手順を参考例として、内部監査の流れを紹介します。

内部監査の手順は下記の通りです。

(1) 内部監査体制の構築(人員配置)

内部監査を実施する前に、当該事業年度の事業開始時までに内部監査担当者を任命しましょう。
しかしながら、内部監査を実施したことがない会社がほとんどではないでしょうか?
おそらく1つ目の高いハードルです。社内に内部監査を経験したことのある人がいればいいですが、経験者がいないことがほとんどです。そこで、中途採用や外部のコンサルタントやアウトソーシング(外注)の検討も必要です。

(2) 内部監査規程・内部監査実施要領等の作成

まず内部監査部門の設置根拠となる「内部監査規程」を作成し、取締役会で承認を受け正式な規程にしなければなりません。また、内部監査を実施するためのガイドラインやその実務手順書として「内部監査手順書(実施要領)」も作成する必要があります。
更に、当該規程のほか、就業規則や給与規程・経理規程・棚卸実地要領・与信管理規程・予算管理規程などの管理系諸規程や営業管理規程・購買管理管理規程などの事業系諸規程など、数十種類の社内諸規程・マニュアルの整備も内部監査実施前までに整備する必要があります。

(3) 内部監査実務スケジュール

内部監査は、事業年度を通じて実施します。具体的には次の手順で進めていきます 。

項目詳細備考
1. 内部監査計画の策定①年間計画の策定  

②内部監査諸書類の作成
①-1 社長承認
①-2 取締役会報告
②  社長承認
2. 内部監査の実施  ①被監査部門への通知
②監査実施(往査)
③監査調書の作成
④改善案の策定
①  部門長確認  

③  社長報告
④  社長からの改善指示等
3. 内部監査結果の通知  ①監査報告書の作成  

②改善指示書の作成  

③改善指示書の交付
①-1 社長確認・承認
①-2 取締役会報告
②-1 社長確認・承認
②-2 取締役会報告
③   被監査部門への交付
4. 内部監査結果と改善  ①改善対応
②フォローアップ監査
③結果報告
①   被監査部門対応  

③-1 社長確認・承認
③-2 取締役会報告

5.内部監査の範囲

IPO準備会社の上場審査における、内部監査の実施の必要性については前述しましたが、取引所の審査上(主幹事証券の審査も同様)、会社の規模等から見て適切な内部監査体制の整備・運用がなされているかどうかがみられます 。
そこで、内部監査運用前に確認すべき主なポイントは次のとおりです。

・ 組織構成
・ 稟議制度
・ 諸規程
・ 予算実績管理
・ 月次決算
・ 取締役会
・株主総会の運営 など
兼任兼務の解消
「稟議規程」の運用状況(事後稟議がないか等)、権限整備状況の確認
月次・四半期、通期で行われているか
月次単位で、P/L,B/S,C/F,資金繰表を作成しているか
「取締役会規程」の運用状況、開催期日、議事録

また、内部監査の対象範囲(部門ならびに子会社)は次のとおりです。①は内部監査室設置組織、②は内部監査室非設置組織となります。

(注)基本的に上場申請会社およびグループ会社の全部門(全拠点)の内部監査が必要。

6.IPO準備会社は内部監査をいつから着手すべきか

さて、あなたの会社のIPOスケジュールは、現在どのタイミングでしょうか? 
内部監査実務(実績)は、遅くとも申請期の1年前(1年以上前)から運用され、全ての部門ならびに重要な子会社を対象に行なわれていることが求められると考えたほうが良いです 。上場審査では内部監査の状況およびその結果を『登録申請のための報告書(Ⅱの部)』に記載することが必要となります。「監査計画」から「監査の結果」、「フォローアップの結果」まですべて記載する必要があります。また、設置だけではなく運用まで書面を含めて主幹事証券や取引所に確認されますので早めの準備をすることをおすすめします。

そこで、推奨したいスケジュールは、直前々期(n-2)中に体制等を整備、そして「トライアル(仮運用)」を実施し、直前期(n-1)から運用を開始する。といったプロセスです。
直前期(n-1)から本格運用を開始するにあたり、初めての内部監査業務となるため、トライアル(仮運用)を実施し直前期(n-1)からぶっつけ本番は避けるのが無難です。

もし現在、あなたの会社が直前々々期(n-3)に入ったのであれば、内部監査構築に向けての準備(下図「導入フェーズ」)を始めても決して早すぎることはないです。

7.最後に

IPO準備企業のための内部監査の留意点がいくつかあります。

(1)内部監査室は独立した部門にするかどうか

IPO審査上内部監査部門は、社長直轄の独立した組織であることがポイントです。
しかし事業規模や拠点数、またリソース(人員)不足などで独立した組織を作れない場合、前述の通り内部監査室を設置せず、管理部門と事業部門に兼任担当者を任命し、クロス監査で独立性を担保することも可能です。

とはいえ、IPO準備段階では、内部管理体制の整備・運用(労務管理・内部統制など)も限られたリソースでクリアしていく必要がありますし、本業(売上・利益の向上、年度計画や中期経営計画の予算達成含む)に注力したいものです。
そのような大事な時期のため、内部監査を外部を活用することを検討してはいかがでしょうか。本来時間をかけるべきIPO準備業務に注力し、外部の力を借りて、まずは体制を構築(導入フェーズ~トライアル(仮運用)フェーズ)し、効率的に柔軟に対応していきましょう。

(2)内部監査対象範囲について

主幹事証券より、申請会社の全部門は勿論のこと、全ての子会社の実査(内部監査)を求められるケースが多いとよく耳にします。リモート監査も一般的に普及してきているため、場合によってはリモート監査も認められることがあるようですが、事前にしっかりと主幹事証券ならびに監査法人と相談しましょう。相談時期についてても早ければ早いほうが良いです。

(3)アウトソースの活用で業務の効率化と第三者(客観性)を担保

(1)でも少し触れましたが、内部監査を外部活用することを検討してみてはいかがでしょうか?
IPO審査上、内部監査の客観性は重要です。しかし、内部監査は自社の社員で行うため、客観性に欠けてしまう恐れがあります。その点、外部(コンサルやアウトソース)を活用することで、自社の内部監査担当者とともに内部監査を実施するため、第三者の目において客観性が高まり、審査上の観点をおさえた効率的かつ効果的な内部監査を行うことができるという利点もあることを有効に活用してください。

船井総研では、定期的に「内部監査関連のセミナー」を実施します。

今現在、上場準備中で、直前々々期(n-3)のタイミングの会社様におかれましては、早めに内部監査構築に向けての情報収集を始めることを推奨しますので、まずは、お問い合わせください。
また、「内部監査」のみならず、IPO準備全般について、弊社では実際に事業会社にてIPO準備に携わった(CFOや上場準備責任者等)IPOコンサルタントが在籍しておりますので、気兼ねなくお問合せください。

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