
事業が拡大し、いよいよ「上場」が現実味を帯びてくると、多くの経営者様が直面する高い壁があります。それが「内部統制」の整備です 。内部統制という言葉を耳にしても、「具体的に何をすればいいのか分からない」「ルールをガチガチに固めて、現場のスピード感を奪ってしまうのではないか」といった懸念を抱かれるケースも少なくありません。
しかし、IPO準備をスムーズに完了させ、上場後も持続的に成長し続ける企業には、共通した「内部統制の捉え方」があります。そこで、経営者が知っておくべき内部統制の本質と、それを「成長ドライバー」へと変える秘訣を詳しく解説いたします。
IPO準備を成功させる社長の「3つの共通点」
これまで弊社が関与してきた多くのIPO準備企業の中で、準備が順調に進む会社の社長には共通点がありましたので、ご紹介させていただきます。

①社長がIPO準備全体の進捗状況を把握している
社長自身が実務で細かく手を動かす必要はありませんが、上場準備全体の進捗に対して無関心にならず、常に全体像を把握していることが不可欠です。社長が状況を把握しているという事実だけで、社内の緊張感と推進力は大きく変わります。
②迅速な意思決定
上場準備期間には、人材の採用や専門的なサービスの導入など、「お金で時間を買う」局面が多数存在します。そのような状況において、社長が迅速な意思決定をできるかどうかが、準備スピードを大きく左右します。
③「上場」を最優先事項として捉えることができるか
上場準備期間中には、法令遵守やガバナンスの観点から多岐にわたる制約や制限が生じますが 、直面した改善事項に素直に、かつ真摯に向き合う姿勢が求められます。上場がすべてではないですが、上場準備中は「上場」という視点で意思決定が必要なケースも多々発生するためです。
あくまでも、弊社が関与してきた上場準備会社に共通した特徴でありましたが、
社長がリーダーシップを発揮することがとても重要になります。
そもそも「内部統制」とは何か?
「内部統制」とは、一言で言えば「会社が健全かつ効率的に運営されるための仕組み」のことです 。金融庁の基準では、以下の4つの目的を達成するために整備されるべきものと定義されています 。
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業務の有効性・効率性:無駄を省き、スムーズに仕事が進むこと
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報告の信頼性:正しい決算書や報告書が作成されること
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事業活動に関わる法令等の遵守:ルールを守って健全に経営すること
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資産の保全:会社の資金や備品を不正やミスから守ること
これらを実現するために、「統制環境(組織の気風)」「リスクの評価と対応」「統制活動(手続き)」「情報と伝達」「モニタリング(監視)」「ITへの対応」の6つの基本的要素を組み合わせて体制を構築します 。
よくある誤解は、内部統制を「自由を奪うだけのブレーキ」だと思ってしまうことです。しかし本来、内部統制とは自動車運転における「安全運転に必要なシートベルト」のようなものです。シートベルトをしっかり締めているからこそ、安心してアクセル(成長ギア)を全開に踏み込み、企業をさらなる高みへと導く「成長ドライバー」とすることができるのです。
「守り」と「攻め」のマネジメントを両立させる
内部統制を整備する上で、経営者に意識していただきたいのが「守り」と「攻め」の視点です。
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「守り」のマネジメント(リスク回避)
通常の上場審査で求められる水準です。人為的なミス、従業員による不正、法令違反を最小化し、財務諸表の適切性を担保します。また、特定の担当者に依存する「属人性」を排除することも重要な目的です。
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「攻め」のマネジメント(業務効率化)
内部統制を整えることは、経営の効率化にも直結します。例えば、戦略的な意思決定プロセスや承認フローを明確化することで、「社長がいなくても会社が回る仕組み」ができ、経営者はよりポジティブな価値創出に集中できるようになります。
この両輪を設計することで、内部統制の整備が単なるコストではなく、事業成長を促進する強力な土台となります。
上場市場によって異なる要件
目標市場によって、求められる内部統制のハードルは異なります。

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一般市場(グロース、スタンダード、プライム) J-SOX制度(内部統制報告制度)が適用され、内部統制報告書の提出が必須となります 。社内規程に加えて、以下の「3点セット」と呼ばれる書類の作成・運用が厳格に求められます。
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業務フロー:業務の一連の流れを可視化した図面
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業務記述書:業務の詳細を文章で説明した書類
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RCM(リスクコントロールマトリックス):潜在的なリスクと、それに対する統制方法を一覧化した表
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TOKYO PRO Market(TPM) 一般市場に比べて柔軟な基準が設計されており 、内部統制報告書の提出は「任意」とされています 。ただし、制度上の義務はないものの、実質的な審査主体であるJ-Adviserや監査法人から、整備状況を説明するために3点セットに近い書類の作成を求められるケースもあります。
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