IPO支援コラム

事前に知っておくだけでIPO準備や今後の業務効率化につながるクラウドサービス活用のポイント

何気なく皆さんが利用されているクラウドサービスですが、クラウドサービスをどのように活用するかによってIPO準備を効率的に進めることができるか否か差が出てきます。なぜIPO準備に活用できるかというと、監査法人や証券会社にかなりの量の資料を提出する必要があり、その過程において社内の情報やデータを整理する必要があるためです。ただ、このプロセスにある社内の情報やデータの整理は、IPO準備に限らず、業務効率化、業務改善につながるヒントが多くあります。
 
クラウドサービス?と思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は気づかずに様々なクラウドサービスを利用されていると思います。クラウドサービスは、インターネットなどのネットワーク経由でデータを保存して提供するサービスのことで、パソコンやスマートフォンを利用されている方は、知らず知らずのうちにクラウドサービスを利用されています。
 
例えば、GmailやYahoo!メールなのに代表されるWebメールなどもクラウドサービスに該当します。パソコンやスマートフォンにメールのデータを保存しているのではなく、クラウド上に保存していることで、パソコンやスマートフォンからログインすることで同じサービスを利用できるようになっています。普段プライベートで利用されているLINEなどのチャットサービスや、twitter、FacebookなどのSNSもクラウドサービスになります。
 
リモートワークが進んで行く状況下において、クラウドサービスの利用は拡大していきますが、まず大前提として、自社で使っているITシステムをセキュリティ面で整理する必要があります。
 

・セキュリティ対策はできていますか?

クラウドサービスに限らず様々なITツールを利用するにあたっても情報漏洩などセキュリティ対策はしっかり行っていく必要があります。特に個人情報を扱うビジネスを展開している場合は、個人情報の漏洩などは起きてはなりませんので、なおさらセキュリティ対策はしっかりと行う必要があります。
 
この場合、まず確認しなくてはいけないのが、社内にIT担当者が配置されているかです。多くのITサービス、クラウドサービスを使っているものの、誰が管理しているのか明確になっていない会社もあると思います。誰が管理しているか明確になっていない場合、社員が退職後も、そのまま仕事で使っていたメールを使うことができる、といったようなリスクも考えられます。担当者を明確にしておき、退職にあわせて適切なタイミングで社内において使っているITサービス、クラウドサービスのアカウントの設定を変更できる体制が整備できていると、このようなリスクを低減することができます。
 
また、サーバが自社かクラウドによっても、社内の担当者に求められる知識や能力も異なってきますので、適切な人員を配置する必要があります。さらに、規程やルール、業務マニュアルなどが整備されている必要もあります。知人のパソコンなどで会社の業務で使っているクラウドサービスにログインして、そのままIDやパスワードを残した状態にした場合、会社外の知人が勝手に会社の情報にアクセスできる状態になってしまうようなことも想定されます。ITサービス、クラウドサービスは便利に使うことはできますが、当然リスクもありますのでリスク低減のための対策はしっかり行う必要があります。
 
セキュリティ対策を整備した上で、クラウドサービスの活用は業務の効率化に非常に有用ですが、特にIPO準備という視点での活用例をお伝えします。
 

・監査法人や主幹事証券、証券取引所に大量の資料やデータを提出する必要がある

以前は、自社サーバに保存した資料のデータを、メールに添付する、もしくはUSBなど外付けのメモリに保存して提出するなど行ってきましたが、クラウドサービスを活用することで簡単に大量のデータを提出することが可能です。
特に、GoogleドライブやBox、Dropboxなどのクラウドサービスを活用することで、資料を保存したフォルダのURLだけのみを共有することで、そこに保存された全データを簡単に共有することもが可能となります。
 
また、監査法人や主幹事証券などにどのような資料を提出する必要がある、ということが事前にわかっていると、通常法業務においても、外部への共有を想定した形で資料を保存、整理しておくことができ、いざ提出が必要となった際に煩雑な作業をすることなく、簡単に対応が可能となります。
 

・様々な履歴やデータをデジタルで残す必要がある

IPO準備において、いつどこで誰が何を、という履歴やデータが求められることが多くあります。勤怠データ一つにしても、残業申請をだれがいつ申請して、承認したか、稟議はどのようなフローで申請し、誰がいつ承認したかなどを証憑として提出を求められる場合、クラウドサービスを活用することで一定の記録を自動的に残すことができ、さらにはデータをエクセルなどに整理しやすい状態にダウンロードできることが多いので、各クラウドサービスがどのようなデータを保存し、どのようなアウトプットが可能を事前に把握しておく必要があります。
 
上記はほんの一例ではありますが、いずれも事前に知識として知っておくことができていれば、比較的対応しやすい内容です。IPO準備においては、将来求められるものを事前に把握でいきているか、前もって通常業務の段階から今後に備えて準備しているか、想定してデータや資料を残しておくことができているかによって、いざ提出などが必要となったときの手間に大きく差が出ます。
 
これは、IPO準備に限らず普段の経営においても、経営陣が必要とする資料やデータを担当者に求めても、提出までに時間を要する場合は事前のデータの整備ができていないことが要因と考えられます。クラウドサービスを利用しているからこそ大量のデータを容易に管理保存することが可能となりますので、その後の活用をイメージして前もっての対応ができるか否かが非常に大事になります。
 
クラウドサービスを活用しきれるか否かはIPO実現だけでなく事業運営拡大の必要条件となります。