IPO支援コラム

コロナ状況下でIPOを考えている会社の取るべき対策とは

【これからのIPO市場】

 
新型コロナウイルスによって日本の経済、IPO市場もかなりの影響を受けており、2020年3月と4月で18社の企業が上場承認を取消し、4月単月での上場承認取消し数は過去最高となりました。
そのような環境下においてIPOを目指す準備企業はどう対応すべきでしょう。
 
まず、今後、考えられるのは証券取引所による上場審査が混み合うことです。その背景としては、新型コロナウイルスの影響で上場承認を取消した18社が、再度上場を目指すのと、当初より2020年中に上場を目指していた会社の審査が重なることが想定されるためです。下記の図は2020年の上場承認取消し企業の一覧となっております。(2020年6月1日現在)
 
2020年上場承認取消し企業一覧
 
上場承認を取消した18社は、一度は上場承認となっていることから、市場環境や業績が回復する見込みがたてば再度上場を目指すこと考えるのが自然です。すでに、2020年5月末時点で3社が、一度上場承認を取消した後に、再度新規上場承認となっています。
 
もともと上場する予定だった企業に加え、上場承認を取消した企業が再度上場を試みるため証券取引所に上場審査の依頼が殺到します。
よって上場準備会社は予定していた時期に審査を受けられない可能性が出てきます。
 
なお、18社が上場承認を取消したにもかかわらず、2020年4月末までに新規上場企業数は昨年と同じ数になっています。それは、2020年1月から4月末までに新規上場が承認された企業数は47社と昨年の1.5倍以上だったためです。
 
これは、東京オリンピック開催により景気が上向くことを期待して2020年をターゲットにしたことと、2020年という区切りのいい年を目指してIPOを準備する企業が多かったからだと想定されます。結果、IPOのターゲットを2020年に設定していた会社が多かったことで、上場承認取消し数も結果として多くなりました。 
 
 

【コロナウイルス状況下で上場取消しになった企業が行ったこととは】

では、一度上場承認を取消したものの、再度上場承認を受け復活を果たした3社はどのように対処したのでしょうか。
 
2020年6月に新規上場予定の会社が6社あります(2020年6月1日現在)
そのうちの3社が上場を一度取消し、再度上場を予定しています。
この再上場を予定している3社が再度上場承認となった要因を以下のように考えています。
 
①2019年3月期を直前期とすることができた
②今期の業績予想を発表できた
それぞれについて説明していきます。
 
①2019年3月期を直前期とすることができた
再度上場を予定している3社は決算月が3月です。
上場準備企業は上場する直前期の業績を発表します。
2020年3月~6月に上場する場合の直前期とは2019年3月期です。
 
ただし、これには「定時株主総会を開催していない」という条件があります。
通常、株主総会は決算月の3か月以内に行わなければなりません。
 
上の3社は2度目の上場承認がおりた5月時点でまだ株主総会を開催しておらず、2019年3月期の決算も確定していないため2019年3月期を直前期とすることができた、1度目の上場審査の際と大幅に提出書類の内容を変えなくてもよかったのです。
このような上場の仕方を「期越え上場」と表現したりします。
 
②今期の業績予想を発表できた
新型コロナウイルスの影響で業績予想をだせていない上場企業が多くあるなか
この3社は上場承認のタイミングにしっかりと業績予想を発表しています。
IT企業2社とテレビやネット通販を主にした卸売りの企業なので3社とも
新型コロナウイルスの影響を受けにくいため業績予想を発表できたかもしれません。
 
しかし、やはりこのように素早く業績予想を発表できることは
予実管理の体制が整っていることが不可欠です。
このことが評価され、再度上場承認がおりたことが予想されます。
 
以上の2つの理由から早いスピードで上場承認がおりたと考えられます。
是非、上場準備段階からこの事例を参考にしてください。
 
 

【コロナウイルス状況下で新規上場した企業とは】

ここで、新規上場承認取消しが多くあった中でも新規上場した企業のその後の状況を紹介します。(2020年3月と4月に上場した企業は25社あります)
25社のうち、上場後の株価の初値が上場前の公募価格を下回った企業は19社です。
その19社のなかで6月2日現在の株価が公募価格を越えているのは8社あります。
 
内訳はIT系3社、メーカー3社、人材系1社、食品1社となっております。
新型コロナウイルスの影響を受けにくいIT企業3社、食品業界の企業、IT寄りの人材紹介サービスの企業、メーカー3社となっています。
 
初値が公募価格を割った企業でも成長可能性の高い企業、堅実な企業は
たとえ上場した際の市況が悪くても後にきちんと市場に評価、投資されていることがうかがえます。
 
また、2019年6月に上場した会社が11社で、2020年6月は6社と約半分になっています。
そのため、今年の上場企業数は60~70社になると予想されます。
 
新型コロナウイルスの影響はIPO市場に顕著にでてきますが、
これから監査法人や証券会社等のIPO関連機関との契約を結びにくくなる
などの影響も少なからずでてくるでしょう。
 
 

【コロナウイルス状況下でIPOの対策】

では、どういった対策が必要かと申し上げますと、
 
・上場準備会社は
①主幹事証券と今後のスケジュールについて打合せをする
②他の証券会社とコネクションを持っておく
 
・監査契約を結んでいない(N-2以前)会社は
①早めに監査法人と証券会社を探し始める
②IPOに精通した人に相談する
 
ことをおすすめします。
 

上場準備会社

① 主幹事証券と今後のスケジュールについて打合せをする

さきほどにも述べたとおり新型コロナウイルスの影響で上場審査が混み合い、
予定していたスケジュールが崩れる可能性があります。
 
また、2022年に東証の市場の再編成が予想されています。
これは現在、東京証券取引所は東証1部、2部、ジャスダック、マザーズ
で構成されていますが、
2022年に東証はプライム、スタンダード、グロースに再編されることが予定され、
各証券会社はこの対応に追われることが考えられます。

そのため、上場準備会社は今一度主幹事証券と上場スケジュールの確認を行ってください。
 

② 他の証券会社とコネクションを持っておく

主幹事証券と打合せしたうえで、主幹事証券の対応が悪い、あるいは現在の主幹事証券での上場が厳しいと
感じたら他の証券会社と契約を結んでください。
 
証券会社も各社自社内のリソースなどの諸事情があったりします。
そのためにも他の証券会社ともコネクションを持っておくことが必要なのです。
万が一のときに備えて、選択できる手段を増やしておきましょう。
 

監査契約を結んでいない会社

① 早めに監査法人と証券会社を探し始める

監査契約を結んでいないが上場を目標にしている会社は
監査法人との締結自体が最初のハードルになりますので、まず、早めに証券会社や監査法人はどこか調べてみてください。
各社によってメインターゲットが異なっています。
 
ちなみに新型コロナウイルスの影響で上場承認を取消した企業18社のうち9社が野村證券となっていますが、
これはもともと2020年4月に上場を予定していた15社のうち7社の主幹事証券が野村証券と多かったため、
特定の証券会社が主幹事証券になると上場承認取消しになりやすいといった傾向はありません。
監査契約を結んでいる監査法人にもこれは当てはまります。
 
よって契約を結ぶIPO関連機関は
担当者とのコミュニケーションの取りやすさ、対応の早さなどの面倒見の良さ等の相性で決めていただくことが望ましいです。
IPOの準備は最短でも3年と長期になってしまうので
適切に業者を選びましょう。

② IPOに精通した人に相談する

次に、IPOに精通した人に相談することをおすすめします。
証券会社や監査法人は多くあり、選定することは難しく、時間がかかります
 
そのため、上場経験のある経営者の友人・知人、メインバンクの担当者、顧問の会計士や税理士からアドバイスをもらうことで効率的に準備を進められます。
実際に監査法人の選定理由として○○にすすめられたというものが多いです。
 
 

【船井総研のIPOコンサルティングとは】

しかし、相談できる人が周りにいなかったりメインバンクの担当者等がIPOに詳しくなく誤った情報を伝えてしまう可能性があったりもするためIPOを専門にしているコンサルタントに相談することがベストでしょう。
船井総研でも無料で経営相談を行っていますので、是非ご活用ください。
 
船井総研のIPOコンサルティングの特徴としては監査法人と監査契約を結ぶ前(N-3以前)からコンサルティングを行っていることです。
 
「監査難民」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、新型コロナウイルスが流行する前から監査法人のスタッフ不足により監査契約を結ぶことが非常に難しくなっています。
監査法人は監査契約を結ぶ前にショートレビューを行います。
ショートレビューとは予備監査ともいわれますが監査法人が企業と監査契約を結ぶ前にその企業が上場する見込みがあるかどうかの判断を同時に行っています。
 
多くの企業はこのショートレビューで監査契約を結べなかったり、そもそもショートレビューすらもしてもらうことができなかったりします。
 
船井総研はこのショートレビューの対策、規定の作成等の管理体制の整備など早期からコンサルティングを行うため経営基盤を強化しながら着実に上場準備を行うことが出来ます。
 
また、船井総研IPOコンサルティングチームでは隔月でIPOの勉強会を行っております。
 
この勉強会では毎回、最近上場した企業の社長様を講師に招いて講演を行っています。
講演ではIPO準備の進め方のコツや苦労話、このコラムで課題にあがった証券会社、監査法人の選定理由や方法について話していただいています。
勉強会では講師や参加している同じ志を持った経営者様たちとつながりを持てるのも参加するメリットだと考えています。
 
以上
新型コロナウイルスがIPO市場に与えた影響とIPO準備企業が行うべきことでした。この記事が円滑なIPO準備の一助となれば幸いです。
 
 
経営相談はこちら
 
【セミナー案内】
社員10名で上場した会社の事例からまなぶ上場までのステップ
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/073721