IPOコラム

監査法人視点で考える監査法人のショートレビューの傾向と対策について

皆さんは監査法人という言葉をお聞きになったことがありますか?

非上場会社においては、あまり馴染みのない言葉ですが、上場会社にとってはとても重要な外部関係者です。特にIPOをめざすためには、自社の決算書に対して監査法人による監査を2期分受ける必要があり、監査法人によるお墨付きをもらう必要があります。

そのためには、監査法人と監査契約を結ぶ必要があるのですが、契約の前に監査法人によるショートレビューを受ける必要があります。

監査法人のショートレビューとは

監査法人のショートレビューは監査対象期間の直前前期の前期(上場申請期の3期前)に受けるのが一般的です。

会社の規模にもよりますが、通常は4~7名、1週間以内でレビューが終了いたします。監査法人はこのショートレビューを通して監査契約を締結するかどうかの判断を行っています。

したがってショートレビューの結果、監査契約を締結できず、当初予定していたスケジュールが1年延期になることもあります。

昨今、監査難民という言葉が出るぐらい、監査法人の監査契約ができない会社が増えています。監査難民にならないためにも、ショートレビューへの傾向を知り対策を講じることが重要となっています。

そのためにはまず、監査法人の立場にたって考える必要があります。

ショートレビューの傾向と対策

監査法人にとって良い監査対象会社とはどんな会社でしょうか?

今後上場できる可能性のある会社であること、すなわち、監査の手間がかからず重要な問題がない会社です。よって、監査法人はショートレビューを通して上場の可能性を見極めます。

では、監査の手間がかからず重要な問題がない会社とはどのような会社でしょうか?

監査の手間がかからないというのは、決算書の数値の誤りが発生しても自社で発見し、訂正できる状態であるということです。

例えば、売上の計上が検収基準に基づく場合、顧客から入手した検収書の金額と日付が売上伝票と一致していることを社内で確認し、一致していない場合には訂正できる体制が整備され運用されているということです。

したがって監査法人は決算書の数字が会計基準に準拠して作成されていることだけを確認しているのではなく、ショートレビューを通じて、その数字が算出される業務フローを確認し、内部管理体制が整備され運用されているかを確認しています。内部管理体制が構築されていないと決算書の数字を誤る可能性が高まるため、監査の手続を増やして誤りがないことを確認する必要があり、結果的に監査の手間がかかることになります。

また、子会社が多い場合や、海外子会社がある場合には特に中小の監査法人には敬遠される傾向があります。特に海外子会社は距離的に離れており、会社の管理が行き届かなくなることにより不正の可能性が高くなるためです。

次に重要な問題があるというのは、一言でいえば、粉飾決算をする会社かどうかです。粉飾決算は一般的に経営者が行う不正ですので、監査法人はショートレビューを通して経営者の不正が起きないガバナンス体制が構築されているかどうか、また、経営者の誠実性を確認します。

よって明らかにショートレビューにて粉飾決算を行っていると判断された場合は、監査契約はできません。

いかがでしょうか?

ショートレビューの傾向がお分かりになりましたでしょうか?この傾向を踏まえどのように対策すべきでしょうか?  やはり社内規程や内部牽制の仕組みを整備・運用し、組織的な管理体制を構築することがショートレビューの対策にとって重要となります。社内管理体制は上場会社でなくても、経営を行う上では重要であるため、早めに着手しても無駄ではなりません。もっとも、経営者は普段から経営に対して真摯に向き合い、誠実に行うことが重要です。

最後に

今回は監査法人の立場からショートレビューの傾向と対策についてお話させていただきました。

最後に、ずさんな監査体制により行政処分を受ける中小監査法人もあることから、中小監査法人の質を確保するための動きもあり、今後より一層監査契約を締結するのが難しくなるかもしれません。

今後はますますショートレビュー前に対策を講じる必要があります。

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