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IPO支援コラム
SOとは何か?ストックオプションの新制度を解説 | M&A・事業譲渡なら船井総研のM&A専門コンサルティング
SOとは何か?ストックオプションを活用することでIPOを目指す会社様が抱える悩みを解消できる可能性があります。IPOを目指す企業が多く検討するストックオプション制度について解説いたします。
Table of Contents
1 SOとは?
SOという言葉の意味をご存知でしょうか?
SOとはストックオプションの略語でして、IPOを目指す会社様が多く検討される制度です。
SOを活用することでIPOを目指す会社様が抱える悩みを解消できる可能性があります。
具体的には、以下のような悩みを解消できる可能性があります。
・事業拡大、商品開発、営業、社内管理等のスペシャリストに関わってほしいが、能力に見合う給与をだすための手元資金が少ない
・優秀な人材の流出を避けたいが、優秀な人ほど給与の高い会社に転職してしまう
これらは、従業員に対するインセンティブ設計の問題としてとらえられます。本稿ではストックオプション(以下、「SO」)について説明致します。
SOとは、新株予約権の一種で自社の株式を原資産とするコール・オプション(将来のある期日までに、その時の市場価格に関係なくあらかじめ決められた特定の価格で買う権利)のうち、特に企業がその従業員及び役員に報酬として付与するものです。
予め決められた価格(権利行使価格)を時価が上回った場合、この権利を与えられた者は利益を受けます。会社の業績の向上は株価に反映されやすいため、会社の業績が上がれば上がるほど権利付与者の利益の向上につながることが考えられます。そのため、非上場会社の場合には、上場そのものに対する意欲を持たせることが可能です。
そして、2019年に「社外高度人材に対するストックオプション税制の適用拡大」に関する内容が経済産業省HPより発表されました。今回の制度改正は、税制上の優遇措置が得られる税制適格ストックオプションの対象に社外の人材が加えられた点が特徴です。
2 税制適格ストックオプションとは
税制適格ストックオプション(以下、税制適格SO)とは、適格要件を満たす場合、課税のタイミングを株式売却時のみにできるSOのことを言います。税制優遇措置を受けるには、付与対象者要件や権利行使期間要件などの要件を満たさなければなりません。税制適格SOに該当すると、SOの権利行使をした時点では課税されず、株式譲渡における売却価格と権利行使価格との差額が譲渡所得となり、そこに所得税が課税されることになります。そのため、税制適格SOは権利付与者にとって大きなインセンティブとなります。
2.1 ■制度趣旨
従来の税制適格SOでは、対象者が社内の取締役及び従業員等に限られていましたが、新制度では高度な知識や技能を有する社外の人材にまで拡大されます。
これにより、スタートアップ企業をはじめとした設立10年以内の中小企業の成長支援に対して、優秀な人材が関わりやすくなります。
では、高度な知識や技能を有する社外の人材とはどのような人材でしょう。
2.2 ■高度な知識や技能を有する人材とは
高度な知識や技能を有する社外の人材とは、以下に該当します。
①国家資格を有し、当該資格に関する3年以上の実務経験がある者
②博士の学位を有し、研究、研究の指導、教育に関する3年以上の実務経験がある者
③高度専門職の在留資格をもって在留し、当該専門性に関する3年以上の実務経験がある者
④上場会社の役員(取締役、会計参与、監査役、執行役)として3年以上の実務経験がある者
⑤将来において成長発展が期待される分野の、先端的な人材育成事業に選定され、従事していた者
⑥社外高度人材活用新事業分野開拓計画*を開始する日から遡った10年間に、日本の公私の期間で製品または役務の開発に2年以上従事した者
(出典:中小企業庁『-中小企業等経営強化法-社外高度人材活用新事業分野開拓計画策定の手引き』)
ただし、上記付与対象者のうち以下に該当する場合は例外にあたります
・大口株主及び大口株主の利害関係者*
・未上場会社の場合、発行済み株式のうち3分の1以上を保有する者
※大口株主の利害関係者とは以下を指します。
・大口株主の親族(配偶者,6親等内の血族及び3親等内親族)
・大口株主と事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の直系血族
・大口株主の直系血族と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
・大口株主から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者及びその者の直系血族
・大口株主の直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
ご覧のように、弁護士や公認会計士など国家資格を有する人材のほかにも、研究者や上場企業の役員経験者が加えられています。経産省によれば、これらの人材は以下の内容に貢献することが求められています。
・製品・サービスの開発に貢献すること
・事業拡大や販路拡大に貢献すること
・会社成長期の組織拡大に伴うガバナンス体制構築等に貢献すること
製品開発において専門技術が必要であり、そのために技術者の知識や経験、能力を活用したい企業側のニーズは想像に難くないですが、会社の内部統制に貢献する人材も対象になっている点は、近年のコーポレートガバナンス強化の必要性やIPO人材への注目が高まっている世相を反映したものともいえます。
※中小企業等経営強化法では、国により認定を受けた事業者が税制や金融の支援を受けられる制度を定められています。
※今回の税制適格SOをめぐる制度変更は、社外高度人材活用新事業分野開拓計画を提出し、認定を受けた企業が対象になります。
2.3 ■制度導入の背景
今回の制度改正に先立って行われた政府の調査では、スタートアップ企業を含む中小企業において、資金調達と並んで質の高い人材確保が課題として認知されています。
『ベンチャー企業を含む中小企業の経営上の課題』(調査対象企業数2636社)
資金調達・・・・・・・・・・・・・・・・・47.6%
質の高い人材・・・・・・・・・・・・・・・47.1%
労的な労働力の確保・・・・・・・・・・・・34.4%
販路開拓・マーケティング・・・・・・・・・31.4%
自社の宣伝・PR ・・・・・・・・・・・・・27.8%
事業や経営に必要な知識・ノウハウの取得・・24.9%
製品・商品・サービスの競争力強化・・・・・23.6%
(出典:経済産業省『平成31年(2019年度)税制改正について』)
制度改正の背景には、中小企業において、会社経営における、事業面・管理面に対して貢献できる人材が必要とされているという認識があります。
従来こうした人材の知識や経験、能力を活用する方法の一つとしては、取締役など役員として登用するか従業員として採用した上でインセンティブとして税制適格SOの権利を付与するといった方法がとられていました。
本制度により取締役など役員としての登用や従業員として採用をしなくても税制適格SOの権利付与が可能な点は、企業が経営課題を解決するために「質の高い人材」を探すにあたって選択肢が広がるため、企業側にとってみれば、様々な立場、組織の人物から関与を受けやすくなります。
他方で人材の側からすると、社員や役員にならなくても、インセンティブとして「税制適格SO」を付与されることで、スタートアップはじめ中小企業の経営に関与しやすくなります。
3 自社に税制適格ストックオプションを導入するには
ストックオプションの導入にあたっては、株主構成を鑑みながら、どのような条件で、誰にどの程度付与するのかを資本政策として検討する必要があります。特に税制適格SOについては該当するための要件が定められているため、税理士等の専門家に相談しながら設計することがおすすめです。
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