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IPO支援コラム
事業承継の前準備⁈個人資産管理会社のメリットとデメリット
Table of Contents
1.はじめに
少子高齢化社会を迎え、事業承継をどうすればいいのか、悩まれている経営者様が多くいらっしゃるかと思います。
事業承継対策は、オーナーや親族、自社が置かれている状況にあわせて有効な方法を選択することですが、個人資産管理会社もその選択肢の一つです。
2.個人資産管理会社とは
個人資産管理会社とは、個人の資産を管理するために設立された法人をいいます。個人資産管理会社のメリットとデメリットを理解するためには、個人資産管理会社の3つのポイント、すなわち①法人であること②保有する資産の種類③事業の有無と自社がIPOを目指すかどうかを押さえる必要があります。
3.個人資産管理会社のメリット
現在、自社の株価が安く、将来株価の上昇が見込まれる場合、オーナー所有の自社株式を個人資産管理会社へ株式譲渡することにより以下のメリットを享受することができます。
①オーナーにかかる譲渡益課税を将来発生するよりも軽減することができます。
②オーナーの相続財産から自社株を切り離すことができます。
③個人資産管理会社に資金力があれば、オーナーは相続税の納税資金を確保することができます。
ただ、個人資産管理会社に資金力がなくても、IPO準備会社のオーナーは所有する株式の全部を個人資産管理会社に譲渡するのではなく、一部株式公開時に売り出しを行うことで、相続税の納税資金を確保することができます。
次に相続が発生した場合には以下のメリットを享受することができます。
①個人資産管理会社が自社の株主になることで、相続による自社株式の分散を防止し、経営の安定が図れます。また、相続人毎に個人資産管理会社を設立することで、相続争いを回避することもできます。
②自社が上場会社でオーナーが直接保有した場合は、オーナー所有株式の時価総額が相続税評価額になりますが、個人資産管理会社が株式保有特定会社である場合、原則として純資産価額方式による評価を行います。この評価方法は、個人資産管理会社の純資産額(帳簿価額)に資産の含み益から含み益の37%(法人税等)を控除した金額を加算した金額に持株比率を乗じた金額が相続評価額となるため、相続税を圧縮することができます。さらに特定会社に該当しない場合には、類似業種比準価格方式により評価額を下げることができます。従って自社がIPOを目指し、上場会社になれば、相続税を圧縮するメリットを享受することができます。
さらに個人資産管理会社が法人であることにより以下のメリットを享受することができます。
①受取配当等の益金不算入、諸経費の損金算入、繰越欠損金の繰越控除の適用
②個人資産管理会社の役員に親族が就任し、役員報酬が支給されることにより、所得の分散を図ることができます。
さらに親族の給与所得から給与控除されることにより、親族全体の手取額を増やすことができます。
③自社の事業と関係のない事業を行う場合に個人資産管理会社を使うことができます。
最後に、後継者がまだ決まっていない場合にも、個人資産管理会社のメリットを享受することができます。
4.個人資産管理会社のデメリット
株式の譲渡益に対する課税は、個人の場合は20%程度ですが、法人の場合は通常は30数%程度ですので、個人資産管理会社が自社株式を売却する場合は不利となります。さらに、オーナーへの配当に所得税等が課税されるため、オーナーが直接株式を売却するよりも手取額がさらに少なくなります。従って、個人資産管理会社に譲渡する株式は、今後売却する必要がないものを譲渡する必要があります。
次に個人資産管理会社の保有資産に土地や不動産が含まれている場合、土地に対する小規模宅地等の特例を使うことができず、取得後3年以内の土地及び家屋等の評価を路線価及び固定資産税評価額によることはできず、時価で評価しなければなりません。
さらに、個人資産管理会社の場合、基本的に事業の実態がないため、事業承継税制の特例措置を原則として適用することができません。従って経営者から後継者へ自社株式を非課税で移転し、贈与税・相続税の納税猶予を受け、最終的に納税免除になることを放棄することになりますので、今後どのように事業承継するのかを踏まえて、慎重に判断する必要があります。なお、上場株式は特例措置の対象外ですので、IPO準備会社においては、必然的に放棄することになりますので、デメリットにはなりません。
最後にIPO準備会社において個人資産管理会社は株主安定政策のために一定数の自社株式を保有することになりますので、自社株式の流通株式比率が低下することになります。そのため上場基準である流通株式基準を満たさない可能性があるので、IPO準備会社はめざす市場の流通株式基準を満たすような配慮が必要です。
【執筆者:坂口 孝幸】
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