IPO支援コラム

取締役の報酬はどう決める!?取締役の構成、役員報酬の決め方、考え方とは

IPO(新規株式上場)を検討されている経営者だけでなく、事業規模の拡大とあわせて組織も拡大していこうと考えているオーナー経営者の方にもご確認いただきたい内容です。

(1)取締役、監査役は何名必要か

オーナー経営者の場合、代表取締役である創業オーナーしか取締役がいない、というケースや親族が取締役や監査役に就任している、というケースが珍しくないと思います。ただし、今後も会社を親族で承継していく、後継者も親族内にいる、というケースを除くと、将来の事業承継を想定してどこかのタイミングで親族以外の取締役を親族以外から選任する必要が出てきます。また、新規上場(IPO)を検討している場合、取締役会の運営が必須となり、取締役会は3名上でなければなりませんので、最低でも3名の取締役が必要になります。同様に監査役会も、3名以上の監査役(うち1名以上は常勤監査役)で構成され、半数以上は社外監査役でなければなりません。
 
新規上場(IPO)を検討していない場合にも、将来の事業承継などを見据えて、社員から取締役を選任し早い段階で上場企業同様に経営体制の強化を図ることがおすすめです。
なお、2014年1月1日~2017年4月30日に新規上場した90社の取締役の総数は354人で、1社あたりの平均は3.94人でとあります。そのうち、3名と4名という会社をあわせて58社と90社のうち65%を占めています。なお、この3.94人には社外取締役は含まれていないため、取締役総数としては実際には5人前後ということになります。
(参考)「90社354名を徹底調査。ベンチャー上場時の役員報酬はいくらなのか?」
https://www.fastgrow.jp/articles/executive-compensation-90
 

(2)取締役の報酬や監査役の報酬の目安は

上場企業の取締役や監査役の報酬に関しては、各社の開示資料から確認できるものもあります。
まず、上場会社の役員報酬1億円以上の開示は、「改正企業内容等の開示に関する内閣府令」に基づいて、2010年3月期決算より報酬等の総額、報酬等の種類別(基本報酬・ストックオプション・賞与・退職慰労金等の区分)の総額を有価証券報告書に記載することが義務付けられています。1億円以上の役員報酬を得ている上場企業の役員は、その事実を有価証券報告書への記載で開示する義務があるということになります。
 
2020年3月期決算の累計2,230社の有価証券報告書によると、報酬額1億円以上の個別開示を行ったのは236社で、人数は480人とで2019年3月期の281社、571人と比較して社数・人数ともに減少していることがわかります。
 
(参考)「役員報酬 1億円以上、人数は累計480人に[2020年3月期決算 上場企業]」
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200630_05.html
 
また、各社の有価証券報告書には個別の役員報酬ではなく、取締役全員の報酬全額が開示されており、対象となる人数も記載されているため、会社ごとの役員報酬の平均額を確認することができます。
2014年1月1日~2017年4月30日に新規上場した90社の取締役354人の報酬の総額は58億3,938万6,000円で、平均値は1,649万5,440円、中央値は1,329万4,750円とのことです。なお、平均値が中央値を上回っているのは、最大額が6,366万円で、最小額が390万円となるためのようです。また、代表取締役と取締役という取締役間での報酬の差は考慮せずに算出されているため、その点は考慮して確認する必要があります。
 
(参考)「90社354名を徹底調査。ベンチャー上場時の役員報酬はいくらなのか?」
https://www.fastgrow.jp/articles/executive-compensation-90
 

(3)取締役の報酬や監査役の報酬はどう決めるべきか

取締役の報酬は定款に定めていないときは、株主総会の決議事項となります。本来、株主総会において役員報酬を決議する場合、株主総会の招集通知に報酬に係る議案を記載する必要があり、株主総会において、報酬に関する内容が相当であるとする理由を説明しなければなりません。しかし、未上場の会社の場合は、実際に株主総会で議案として審議されることなく書面上の手続きとして決定されていることが多いのではないでしょうか。取締役がオーナー経営者やオーナー親族だけで構成されている場合は大きな支障がない、ということかもしれませんが、親族以外の取締役がいる場合はそうはいきません。
 
さらに、株主総会決議としておきながらも、株主総会決議の枠内での取締役の報酬の具体的な配分は、取締役会決議により社長に一任されることが多く、多くの会社では社長(と人事担当役員ないし人事部長)のみが報酬の支給の基準を知り、他の取締役は自己の報酬がどのように決まるのかを全く知らないことも少ないです。
上場企業でも同様に、役員報酬の決定プロセスについて、かねてからガバナンス上の課題とされていました。その為、上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)においてガイドラインとして参照すべき原則・指針である「コーポレートガバナンス・コード」により、役員報酬に関して株主への説明責任を果たせるような支給水準、業績連動、支給項目、報酬の決定プロセスであることが求められています。
 
「コーポレートガバナンス・コード」において取締役や監査役の報酬に関して記載されている箇所を一部抜粋してご紹介します。
【原則4-2.取締役会の役割・責務(2)】
経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである。取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。
上記以外にも【原則4-3.取締役会の役割・責務(3)】や【原則4-4.監査役及び監査役会の役割・責務】にて経営陣の報酬に関して言及されています。
 
「2018/06/01 東証 改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20180601.html
 
大和ハウスグループでは「コーポレートガバナンス・コードに基づく情報開示 報酬の決定方針と手続き」として具体的な数字を含めて開示されています。
「コーポレートガバナンス・コードに基づく情報開示 報酬の決定方針と手続き」
https://www.daiwahouse.com/ir/governance/pdf/principle3-1-3.pdf
 

(4)具体的な報酬額はどう決めるべきか

上記のように、上場企業の取締役報酬の水準や、取締役の報酬を決めるために必要な手続きなどは理解できたものの、具体的に報酬金額をいくらにするのが妥当なのかを知りたい、という経営者の方も多いと思います。社員から取締役になった場合は、社員時の給与をベースに考えやすいということもあるかもしれませんが、社外取締役、常勤監査役、非常勤監査役などとなるとベースの金額がないため、どの水準で考えるのが良いか考えてもなかなか答えが出ない、というケースも多いです。そのような場合は、他社が支払っている報酬の相場などを参考にするのも良いと思います。
 
取締役の構成や役員報酬の決め方についてご紹介いたしましたが、基本的には上場会社として、という内容が多くなっております。というのも上場企業は様々な視点で情報開示が求められているためです。
上場企業の取締役や監査役の人数や構成などは理解できたが、未上場でオーナー代表取締役1名の状態からどのように取締役や監査役を増やしていけばよいか、どのような人物を選任するのが良いかを知りたい。その場合の取締役ならではの教育をしたほうが良いがどのように実施するのが良いかわからない。上場企業の役員報酬の情報は開示されているものの、上場企業の役員報酬だと、大手企業も含まれている、自社とは規模が違う、そもそも上場ではなく未上場の場合どのように取締役や監査役の報酬額を決めるのがよいか知りたい、という場合は船井総研のIPOのセミナーにご参加ください。
 
現在IPO準備を行っている経営者様や、IPOを目指すか検討中だが、取締役が何人必要で、どのような構成にすすべきか、またその場合の報酬はどのように決めて、金額はどうするのが良いか、という点を知りたい経営者様、是非ご参加ください。

https://lp.funaisoken.co.jp/mt/funai-ma/booklet-ipo-dl.html?txt=%E3%80%90IPO%E3%80%91%E6%99%82%E6%B5%81%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%882021&url=https://asset.funaisoken.ne.jp/IPO/IPO-dl01.pdf