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IPOコラム
営業利益1億円以下で上場した企業から学ぶIPO企業の成長性【プラットフォームビジネス編(ラクスル・アズーム)】
今回は実際に2018年に営業利益1億円以下で上場した企業について分析していきます。
Table of Contents
■1億円以下・赤字でも上場可能だが、成長性は不可欠
2018年のIPO企業は90社です。
そのうち、営業利益1億円以下で上場した企業は17社と、全体の18%を占めます。
そして、これらの企業のほとんどが、マザーズ上場です。
上場市場としてマザーズを目指す場合、形式要件に売上高や純資産が設定されていないものの、
高い成長性が求められます。
定量的に明記されていませんが、上場申請期の2年前から売上高や営業利益が前年比で
およそ30~40%以上増加しており、上場後も成長を維持できることが目安です。
今回は、プラットフォームビジネスに立脚した成長性に着目します。
マザーズへの上場に際して、一般的に想起されるような新興産業ではなく、
既存産業にどのように適用させているか、という観点から触れます。
現在展開されている事業をさらに成長させる手法としてご参考いただけると幸いです。
■Case.1_印刷業界にプラットフォームを構築したラクスル株式会社
1つ目にご紹介する企業はラクスル株式会社です。
同社は2009年創業と老舗企業ではないものの、印刷産業という成熟産業に位置しています。
[図1] 出所:新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)をもとに弊社集計
過去の売上高の推移を[図1]にまとめております。
申請直前期の売上高は7,675百万円です(なお営業損失は1,145百万円)。
2015年から売上高が前年比で50%以上拡大しています。
同社の特徴の1つに、顧客と工場のリレーション向上を優先し、
自社の生産設備増強にはあまり注力していない点があります(営業損失が生じた要因も、
CRMを重視し、コールセンターを確保した点にあります)。
印刷業界では、中小規模の印刷会社が乱立しており、
効率よく案件が紹介・消化されていません。同社は、成熟業界で企業が飽和している状況から、
ネットワーク化のニーズを汲み取ったのです。
また、小口顧客に対応できる点も特徴です。営業フローのEC化を進めることで、
人件費を削減できました。結果として低単価・小規模の注文でも利益を生み出すことが
可能になりました。
プラットフォームビジネスにおける競合との勝敗は、シェアに左右されます。
規模の経済が働くためです。シェアの拡大には、短期間にプロモーションできる体力が
必要になります。IPOは、資金調達・知名度の向上の点で有利にはたらくと考えられます。
■Case.2_月極駐車場から上場した株式会社アズーム
2つ目にご紹介する企業は株式会社アズームです。
同社は「世の中の遊休不動産を活躍する不動産に」を企業理念として掲げており、
月極駐車場の紹介と、空き駐車場をオーナーから借りて顧客に提供するサブリース事業を運営しています。
申請直前期の売上高は12億2千万円、営業利益は31百万円です。
過去の推移は以下[図2]の通りです。
[図2出所:新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)をもとに弊社集計
駐車場事業者数は、2006年に 36,101事業所でしたが、
2014年には27,073事業所へ約9,000事業所の減少がみられます。
同社は事業者数の減少・統合という業界の局面で、プラットフォームビジネスを組み立てています。
同社の具体的な事業内容は以下の通りです。
月極駐車場の紹介事業としては、「カーパーキング」というポータルサイトを運営しています。
これはエンドユーザーがデータベースから立地や賃料などの絞り込み検索を行えるシステムです。
データベースは国内でトップクラスの規模で、2018年6月時点で47,767件の情報が保有されています。
「月極駐車場に特化」しており、情報量は業界随一です。
ちなみに、駐車場業界最大手のパーク24でも月極駐車場の案件数は2,200件程度に留まります。
また、サブリース事業においては、オーナーから遊んでいる駐車場を借り上げ、
エンドユーザーの集客、契約からトラブル対応まで一貫して運営します。
収益を左右する指標は、「サブリース台数÷マスターリース台数」であらわされる駐車場の稼働率です。
同社の場合、自社のポータルサイトに案件を紹介することで集客を図ります。
結果として稼働率は90%台にまで高まります。
2018年期の売上構成について付言すると、ポータルサイト運営による手数料収入は1億43百万円であるのに対し、サブリース事業が10億48百万円を占めています。
ただし、サブリース事業が成長するためには、ポータルサイト運営が必要になります。
「ポータルサイトによってエンドユーザー確保⇒サブリース事業でストック化」
という図式が同社のビジネスモデルです。
代表取締役社長の菅田洋司氏は、同じく駐車場業界大手である日本駐車場開発へ勤務していた経歴があります。
ポータルサイトの開発経緯に触れた「利用者が駐車場を借りるには不動産業者への訪問のほか、現地で募集看板を見つけて電話などで問い合わせをすることが主な方法で、時間と労力がかかっていた」という発言からは、実務経験が活かされていることを伺えます。
今回は、プラットフォーム開発・運用による企業の成長性確保に触れました。
しかし、冒頭にもお伝えしたように、昨年営業利益1億円以下で上場した企業は17社もあります。
成長性の描き方の秘訣は他にも様々あるのです。
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