IPOコラム

2025年上半期の東京プロマーケット(TOKYO PRO Market)の総括

2025年上半期の東京プロマーケット(TOKYO PRO Market)の動向

TOKYO PRO Market(以下、TPM)への新規上場企業数は

・2024年は過去最高の50社

・2025年も上半期(1月~6月)で既に21社

という状況にあり、2025年も通年では2024年の50社前後の新規上場企業数になることが見込まれます。(なお、2025年上半期のグロース市場への新規上場企業数は18社)

今までは、「新規上場を目指す=グロース市場への上場を目指す」企業がほとんどでしたが、「新規上場を目指す=TPMへの上場を目指す」という企業が増えてきており、

TPMが上場を目指す企業にとって有力な選択肢の一つとなっていることがわかります。

上場を準備されている経営者の皆様は、今後さらにTPMを介した企業成長事例が増えていく可能性から、新規上場のタイミングとどの市場を最初に目指すべきかを慎重にご判断いただく必要があります。

新規上場企業数の推移

(図1:2025年6月末時点で各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成)

TPMでは、2021年頃から新規上場企業数が右肩上がりに増えています。

2024年には過去最多の50社が新規上場を果たし、TPMへの注目度がさらに向上しました。

そんな中、2025年上半期においてもすでに21社が新規上場しています。

新規上場企業の特徴

業績規模(2024年度比較)

(図2:2025年6月末時点で各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成)

TPMへ新規上場した企業の売上高において、2024年と2025年上半期新規上場企業の中央値は両年20憶円を超えています。

一方、最小値においては「0」と記載されています。これは、売上が立っていない中で新規上場した企業のものであり、事例としては初となります。

また、経常利益における中央値に着目すると、2024年は0.8億円であるのに対し2025年では1.5億円であり、2025年上半期の新規上場企業では半数が1.5憶円以上の経常利益を確保しているということになります。

TPMとグロース市場への新規上場企業の事業比較

(図3:2025年6月末時点で各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成)

2025年上半期に新規上場した企業の業種の内、上位3業種を占めるのは「サービス業」、「小売業」そして「情報・通信業」です。

グロース市場においても上位2業種を占めるのが「サービス業」と「情報・通信業」であることから、両市場において「サービス業」と「情報・通信業」は共通して上場件数が多いということが分かります。

監査法人の状況

(図4:2025年6月末時点で各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成)

監査法人は、2019年からTPMへ新規上場する企業の監査を多く務めるコスモス監査法人と2021年度から実績が加わった監査法人FRIQが3社となっています。

TPMへ新規上場を目指す会社は大手よりも準大手・その他に属する監査法人と契約して上場する傾向にあります。

TPMとグロース市場への新規上場企業の売上高比較と経常利益比較

(図5:2025年6月末時点で各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成)

TPMに新規上場する企業の売上高において、特に中央値に注目すると2023年13億円、2024年22億円、そして2025年上半期は29億円と徐々に増加してきています。

グロース市場へ新規上場した企業の売上高の中央値と比較すると、2025年上半期では29億円であることからほぼ同水準であることが分かります。

但し、経常利益の中央値はグロース市場が2023年1.1億円、2024年1.3億円から2025年上半期は3.8億円へと大幅に増加しています。

2025年上半期のTPMにおいては、経常利益の中央値は1.5億円であることから差が広がっているように見えます。

IPO市場のトレンド・トピック

TPM上場企業の増加要因

(図6:2025年6月末時点で各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成)

注目すべきは、グロース市場において上場維持基準の変更が検討されている点です。

上場維持基準案は「上場5年経過後の時価総額100億円以上」となっています。

2030年から適用される予定であり、機関投資家が投資対象としやすい企業への早期成長を促し、市場を活性化させ、未来の日本経済を牽引するスタートアップの創出・成長を目指すことを目的としています。

※出典:東京証券取引所上場部 「グロース市場における今後の対応」 2024年4月22日より参照

(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/mklp770000002odz.pdf)

しかし、既存の上場企業でこの基準を満たすのは3割未満であるというのが現状です。

今後はこの変更を受けて、グロース市場へ直接上場を目指すのではなく、まずTPMに新規上場し、そこで企業としての実力を培ってからグロース市場へとステップアップ上場を目指す企業が増加するのではないかと推測されます。

まとめ

2025年上半期のTPMの動向を振り返ると、新規上場企業の半数の売上高が20億円以上で経常利益が1.5億円以上であること、「サービス業」「小売業」「情報・通信業」が上位3業種を占め、そして監査法人は大手ではなく準大手以下を選ぶ傾向にあるといったことが分かりました。

一方で、グロース市場で、検討されている上場維持基準の変更案により、上場そのもののハードルが上がっていると推測されます。

そのため、TPMの市場動向を把握した上で、上場そのもののハードルが高くなったと推察されるグロース市場を真っ先に目指すのではなくTPMにまず上場しステップアップとして本則市場を目指すなど、多角的に上場戦略を考えるのが良いのではないでしょうか。それゆえ今後も、早期の情報収集や専門家の活用がより一層重要になります。

将来的な上場を考えているが目標市場がまだ明確ではないといった方でも、J-AdviserやIPOに関する有識者へのできるだけ早い相談をおすすめします。

株式会社船井総合研究所は、J-AdviserおよびIPOコンサルタントの両面から上場準備を支援可能です。

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