IPOコラム

「時価総額100億円」グロース市場の改革が示す新規上場の新常識

IPOを目指す上場準備会社が直面する「時価総額100億円」の壁と、問われる上場後の成長戦略

2022年の東京証券取引所の市場再編を経て、グロース市場は「高い成長可能性を持つ企業のための市場」として新たに位置づけられました。しかしその後、上場後に成長が鈍化する企業も少なくなく、一部の投資家からは「名ばかりグロース市場」との批判も上がっていました。

こうした課題を受け、東証はグロース市場の信頼性と健全性を高めるため、改革に本格的に着手しています。その中心に検討されているのが、

・上場維持基準を上場5年経過後から、時価総額100億円以上へと変更(現⾏︓上場10年経過後から、時価総額40億円以上)
・2030年以降上場5年経過している上場企業に適用

になります。

1. 上場はゴールではなく、成長のスタートライン

今回の見直し案により、企業はグロース市場への上場時点で「時価総額100億円をどう目指すか」という成長戦略を描くことが求められることになります。

財務戦略、IR体制、資本政策、人材戦略など、経営のあらゆる側面において中長期的なビジョンの具体性と実現可能性が問われ、企業は上場時から「ポストIPO成長ストーリー」の準備が必要になります。

2. VCに求められる“目利き”と伴走力

この改革は、ベンチャーキャピタル(VC)などにとっても、大きな転換点となります。特に、ベンチャー企業へ出資するベンチャーキャピタルはEXITとしてIPOを想定する場合は、「この企業は5年以内にグロース市場で時価総額100億円を狙えるか?」という観点で、投資判断を実施する必要があります。

3. 情報開示とIRの精度が時価総額を左右する

時価総額100億円の壁は、利益規模だけでなく、PERという視点も意識する必要があります。将来性や成長ストーリー、市場の可能性といった定性情報の「語り方」も、評価を大きく左右することになります。

このような環境下では、企業にとってのIR活動は、単なる情報公開ではなく、「未来の価値を信じてもらう対話の場」としての役割を果たします。

プロダクトの革新性、競合に対する優位性、市場拡大のトレンドなど、成長の裏付けとなる要素をいかに構造的かつ魅力的に投資家に伝えられるか。その発信力が、時価総額の伸長に直結するのです。

4. IPO準備企業は「100億円の視点」で再設計が必要

今回の見直し案によってIPO準備企業は明確な目標設定が必要になってきます。
それが、「時価総額100億円」です。

新規上場時点のビジネスモデルや財務基盤だけでなく、上場後の市場評価を維持・向上させるための経営力があるかどうかが、これからのIPOでは真剣に見極められます。

経営者自身が成長責任を自覚し、ガバナンス・人材・資本政策を抜本的に見直すこと。
そして、時価総額100億円の実現可能性を語れるだけの経営の構造改革が必要です。

5.グロース市場への IPO準備企業が直面する選択肢

今回の見直し案によってグロース市場への上場を目指して準備を進めていた、もしくは準備を進めようとしていた会社は以下の選択肢からの意思決定が求められている状況です。

①グロース市場への新規上場(IPO)のタイミングで時価総額100億円を超えるような事業計画に作り直した上で、引き続きグロース市場を目指す

②グロース市場への上場時期を後ろ倒しにして、時価総額100億円を超えるタイミングでグロース市場への上場を目指す。

③グロース市場への新規上場(IPO)を目指すかどうか自体を改めて見直す
 (状況次第では上場を目指すことをやめる)

④TOKYO PRO Marketへ上場した上で、時価総額100億円を超えるような事業計画に作り直してからグロース市場を目指す

6.なぜTOKYO PRO Marketへ上場という選択か

グロース市場への上場のプロセスとして、なぜTOKYO PRO Marketへ上場という選択肢がでてくるのでしょう。

・上場準備を一定水準まで進んでおり内部管理体制も整っているため
・上場会社となり知名度や信用力を得て事業を成長させるため
・採用力を強化するにあたって上場会社として採用活動を行いたい
・大手企業との取引が多いため上場会社となることで与信面での変化を期待
・借入などにおける金融機関との取引関係の変化を期待
・後継者のことを考えて借入などにおける個人保証を外したい
・グロース市場への上場のステップとしたい
など様々な理由でTOKYO PRO Marketへの上場を検討される会社が多くあります。

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