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IPOコラム
内部統制とは?目的と基本的要素について解説!
Table of Contents
1. 内部統制とは
内部統制とは、「企業が事業活動を健全かつ効率的に運営するための仕組み」であるとともに「組織内の全従業員が遵守すべきルール」のことです。
2. 内部統制の意味・定義
金融庁が公表している「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部統制について以下のように定義されています。
【 金融庁 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」より抜粋 】 基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。 ( 引用元 : https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20191213_naibutousei/1.pdf ) |
3. 内部統制の整備が求められる企業
上場企業(IPO準備企業)と取締役会を設置している会社法上の大会社は、内部統制の整備が法律で義務付けられています。ただし、義務付けられていなくても、業務の効率化につながり「企業の評価」も高まるため、「整備~構築~運用」をすることをおすすめします。
【内部統制の整備が求められる企業】 |
(1) 上場企業 |
(2) 会社法上の大会社かつ取締役会設置会社 |
(3) IPO準備企業 |
(1) 上場企業
金融商品取引法第24条では、有価証券報告書の提出が必要な上場企業に対して、内部統制報告書の提出義務を定めています。
(2) 会社法上の大会社かつ取締役会設置会社
会社法第362条5項では、会社法上の大会社は、会社法における「内部統制」を整備することが義務付けられています。会社法上の大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金が「5億円以上」、または、「負債額が200億円以上」の会社を指します(会社法第2条6号)。
(3) IPO準備企業
上場を果たした最初の決算報告で「内部統制報告書」の提出が法律で義務付けられていますので、IPO準備期間中(時期としてはn-2)に「内部統制」を整備・構築しなければなりません。IPO準備企業の内部統制の「整備~構築~運用」は上場審査の対象項目であり、また、上場会社には前述の通り、「内部統制報告書」の提出義務があるため、IPO準備企業であれば内部統制の整備は必須事項となります。
4. 内部監査・コーポレートガバナンス・コンプライアンスとの違い
【 「内部監査」「コーポレートガバナンス」「コンプライアンス」との違い】 |
(1) 内部監査との違い |
(2) コーポレートガバナンスとの違い |
(3) コンプライアンスとの違い |
(1) 内部監査との違い
「内部監査」は、会社の内部の者(従業員等)が、経営者(代表取締役社長)に命じられて社内諸規程の内容のほか、その諸規程が適正に運営されているかなどをチェックすることです。一見、内部統制と同じように思われますが、内部監査は、内部統制が機能しているかをチェックするというもので、内部統制の仕組みの1つが内部監査という位置づけになります。
(2) コーポレートガバナンスとの違い
内部統制は、経営者(代表取締役社)が従業員などを管理するための仕組みです。経営者(代表取締役社)や取締役は、内部統制を整備・運用をする側になります。ただし、取締役会を正常に機能させることなどで、経営者側にも一定の牽制効果は働きます。一方、「コーポレートガバナンス」とは、健全な企業を運営するための仕組みである点は内部統制と同じです。しかし、株主や取締役会などが、経営者(代表取締役社)を監視することで不正や暴走を防ぐ仕組みのことを指します。
(3) コンプライアンスとの違い
「コンプライアンス」とは法令遵守という意味です。従業員が業務を行う上で遵守しなければならない決まり(法令)です。しかし実際は、倫理規範や就業規則、道徳やマナーまで幅広く含まれることが一般的です。コンプライアンスは、企業のあるべき姿であり、内部統制はコンプライアンスの徹底に至るまでの手段という位置づけになります。
5. 内部統制の4つの目的
内部統制には、以下のように大きく4つの目的があります。
【内部統制の目的】 |
(1) 業務の有効性および効率性 |
(2) 財務報告の信頼性 |
(3) 事業活動に関わる法令などの遵守 |
(4) 資産の保全 |
(1) 業務の有効性および効率性
内部統制を行う1つ目の目的が「業務の有効性および効率性」です。企業活動においては、「ヒト・モノ・カネ・情報」という4つの経営資源を有効活用することが非常に重要となり、これらの経営資源を最大限活かせていない場合、業務効率が低下して経営状況を悪化させる要因となります。企業が経営目標を達成するには、業務の有効性や効率性の改善は不可欠となります。
(2) 財務報告の信頼性
内部統制の2つ目の目的が「財務報告の信頼性」です。財務報告は企業の経営状況を判断する上で欠かすことができない要素です。その財務報告において、粉飾決算や虚偽の記載が行われた場合、投資家や取引を行う金融機関、取引先企業などのステークホルダーに大きな損失を与えることになります。反対に、財務報告の透明性が高ければ、ステークホルダーからの信頼獲得につながり、良好な関係性を築くことができるでしょう。ちなみに、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」この3つの財務諸表を総称して、財務三表と言われています。
(3) 事業活動に関わる法令などの遵守
内部統制の3つ目の目的は「事業活動に関わる法令などの遵守」です。事業活動に限らず、あらゆる社会活動を行う上で法令遵守は欠かせません。企業であれば、利益の追求だけに目を向け、法令遵守を怠った場合、社会的信用を失うだけでなく事業を継続することがままならなくなります。事業活動を継続するためにも、法令遵守はもちろん、企業倫理の徹底も含めたコンプライアンス強化への取り組みは必須です。
(4) 資産の保全
内部統制の4つ目の目的は、「資産の保全」です。企業は資本金という資産を元手として事業を行います。当然ではありますが、資産が尽きれば事業活動を継続することはできません。経営状況を安定させて事業を継続するためには、資産の適切な管理・運用が不可欠であることは言うまでもありません。
6. 内部統制の6つの基本的要素
前述の「内部統制の4つの目的」を実現するには、次の6つの要素が必要になります。
【内部統制の6つの基本的要素】 |
(1) 統制環境 |
(2) リスクの評価と対応 |
(3) 統制活動 |
(4) 情報と伝達 |
(5) モニタリング |
(6) ITへの対応 |
(1) 統制環境
「統制環境」とは、内部統制を遵守して適切に運用する環境を整えることであり、その他5つの要素の基盤とも言えます。内部統制を実現するには、役員はもちろんのこと、社内のすべての従業員が内部統制の意義や目的を理解する必要があります。そのためには、企業理念や経営方針、経営者の意向など、組織の根本的な気風を浸透させることも重要です。年度中に最低1回は研修などを開催することをおすすめします。
(2) リスクの評価と対応
内部統制を実現するには、「リスクの評価と対応」、つまりリスクマネジメントが不可欠となります。この「リスク」とは、内部統制の目的達成までの障壁・障害となり得る要因のこと。内部統制の4つの目的を達成する上で、どういったリスクが存在するのかを把握し、分析・評価を行います。その上で、想定されるリスクに対応するためのプロセスを整備する必要があります。
(3) 統制活動
「統制活動」とは、組織としての決定事項を確実に遂行するための仕組みづくりです。統制活動の具体的な取り組みとしては、職務権限(職務権限規程)や職責の整理・付与、職務の分掌(業務分掌規程)などの社内規程や業務マニュアルの作成・整備、運用などがあげられます。
(4) 情報と伝達
「情報と伝達」とは、社内外における情報伝達を適切に実行するためのプロセスです。内部統制を実現するためには、必要な情報を然るべきタイミングで関係者へと伝達する必要があります。そして、従業員は伝達された情報を正しく識別・把握するとともに、その情報の扱い・処理についても理解する必要があります。
(5) モニタリング
内部統制の構成要素として、「モニタリング(監視活動)」も挙げることができます。内部統制はただ取り組むだけでなく、有効に機能しているかを継続的に監視し、評価および改善を行う必要があります。モニタリングには、普段の業務のなかで行われる「日常的モニタリング」と、経営者(代表取締役社長)や取締役会、監査役・監査役会、内部監査部門などによって行われる「独立評価」の2つがあります。
(6) ITへの対応
「ITへの対応」とは、事業活動に必要なIT技術を導入し、適切に整備・運用することです。業種業界を問わず、効率的に業務を遂行するためにITの導入は不可欠です。また、内部統制に必要な上記5つの構成要素を機能させる上でも、IT導入(DX化)は重要なポイントとなります。
7. 内部統制に関わる人物とその役割
組織内の役員ならびに従業員等がどのような形で内部統制に関わるのかを理解しましょう。
【内部統制に関わる人物】 |
(1) 経営者(代表取締役社長) |
(2) 取締役会 |
(3) 監査役(監査役会) |
(4) 内部監査人(内部監査室) |
(5) 従業員 |
(1) 経営者(代表取締役社長)
経営者(代表取締役社長)は、内部統制が適切に機能するように整備・運用を行い、代表者として内部統制報告書を提出する義務があります。
(2) 取締役会
取締役会は、内部統制の基本方針決定に携わり、内部統制の整備・運用を監視する責任を持ちます。
(3) 監査役(監査役会)
監査役(監査役会)は、取締役の職務を監査する一環として、独立した立場から内部統制を監査・評価を行います。
(4) 内部監査人(内部監査室)
内部監査人(内部監査室)は、組織の内部から内部統制の整備・運用状況の評価を行います。組織から独立した立場の監査役(監査役会)と、組織内から評価を行う内部監査人(内部監査室)という2つの視点から、組織の内部統制を監査します。
(5) 従業員
内部統制は社内のあらゆる業務に組み込まれるものであり、全従業員が遵守・遂行するルールです。
そのため、正社員はもちろん、パート・アルバイトで働く従業員や派遣社員など、組織内のすべての従業員が当事者意識を持つ必要があります。
8. 内部統制の3点セットとは
内部統制に取り組む際、「内部統制の3点セット」という言葉がしばしば登場します。内部統制の3点セットとは、次のことを指します。
【内部統制の3点セット】 |
(1) 業務記述書 |
(2) フローチャート |
(3) リスク・コントロール・マトリックス(RCM) |
これらの3点セットは、内部統制の状況や課題の把握に役立つため、内部統制報告制度(J-SOX法)の対象企業をはじめとした多くの企業が作成しています。内部統制の3点セットについての詳細は次のとおりです。
(1) 業務記述書
業務記述書は業務内容を記述した書類のことで、業務の流れを整理し、各工程で「誰が」「何を」「どのように行うのか」を記述します。業務の一連の流れのなかで行われる作業の詳細や、リスクとなり得る工程、担当者の業務理解度などを把握するのに役立ちます。
(2) フローチャート
業務記述書が業務内容を明文化したものであるのに対し、フローチャートは図を使って可視化したものです。部門毎(子会社がある場合は、法人単位)の業務の流れを可視化することで、組織全体の業務の流れの全体像を把握するのに役立ちます。
(3) リスク・コントロール・マトリックス(RCM)
リスク・コントロール・マトリックス(RCM)は、業務記述書やフローチャートの作成で把握したリスクと、そのリスクへの対応をまとめた一覧表です。リスク・コントロール・マトリックス(RCM)を作成することで、どの程度リスクをコントロールできているのか、内部統制の有効性を把握するのに役立ちます。
9. 内部統制の構築手順
内部統制を構築する際の大まかな流れ・手順は次のとおりです。
【内部統制の構築手順】 |
(1) 基本的計画及び方針の決定 |
(2) 整備状況の把握 |
(3) 不備への対応および是正 |
(4) 内部統制の報告 |
(1) 基本的計画及び方針の決定
内部統制の基本方針は、取締役会で決定することが会社法によって定められています。経営者は、取締役会で決定した基本方針に、組織全体および部署・業務といった各単位で実行するための基本的計画および方針を策定します。
(2) 整備状況の把握
内部統制の基本的計画および方針が決定したら、内部統制の整備状況を確認・把握し、その結果を記録・保存します。この際、フローチャートなどを活用して整備状況を可視化することで、内部統制の有効性を評価することができます。
(3) 不備への対応および是正
整備状況を把握する過程で発見した不備に対し、適切な対応を図ります。経営者および各業務プロセスの責任者は、内部統制の基本的計画および方針に基づいて、不備の是正措置を講じます。
(4) 内部統制の報告
把握した整備状況および是正内容を踏まえ、経営者(代表取締役社長)が評価内容をまとめて内部統制報告書を作成します。作成した報告書を監査人が確認し、内部統制監査を行うといった流れです。
10. 内部統制を行うメリット
内部統制の取り組みは、企業や従業員にとって多くのメリットがあります。では、具体的に内部統制に取り組むメリットについて理解しましょう。
【内部統制を行うメリット】 |
(1) 業務の可視化・効率化 |
(2) 財務状況の可視化 |
(3) 社内ルールやガイドラインの整備 |
(4) 社員のモチベーション向上 |
(5) 企業の社会的信用の獲得 |
(1) 業務の可視化・効率化
内部統制に取り組むと業務内容や手順を洗い出すことになるため、必然的にワークフローが可視化されます。ワークフローが可視化されることで、今まで気づかなかった非効率な業務やボトルネックになっている業務を把握・分析できるようになり、業務効率の改善にもつなげることができます。
(2) 財務状況の可視化
内部統制に取り組むことで、財務状況の可視化にもつながります。事業活動の根幹である財務状況を適切に把握することで、精度の高い経営判断が可能となります。
(3) 社内ルールやガイドラインの整備
内部統制を行うことで、社内ルール(諸規程)やガイドラインの整備が進みます。社内ルール・ガイドラインが全社的に浸透することで、コンプライアンスの向上および不正・セキュリティリスクの防止につながります。
(4) 社員のモチベーション向上
業務の効率化が進み、守るべきルールも明確化されることで、従業員にとってはより働きやすい環境となります。
(5) 企業の社会的信用の獲得
内部統制に取り組み、財務状況の透明性やコンプライアンスが向上することで、社会的信用の獲得にもつながります。その結果、企業価値が向上し、資金調達や商取引の円滑化、さらには採用活動や離職率軽減などにも繋がります。
11. 最後に
株式会社船井総合研究所では、上場準備会社様に向けたIPO準備に関するセミナーを定期的に開催しております。
また、IPO準備全般について、弊社では実際に事業会社にてIPO準備に携わった(CFOや上場準備責任者等)IPOコンサルタントが在籍しておりますので、下記よりお問合せください。
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